価格は高めだが、超薄型でデザインにもこだわった。世界の薄型テレビ市場で伸ばしてきた実力を日本でも発揮したい
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「5年以内シェア5%」を目標に、2008年以来2年ぶりに日本の薄型テレビ市場に再参入した韓国LGエレクトロニクス。しかし、その目標達成に早くも黄信号が灯っている。

 11月4日に予約を開始したが、LGの液晶テレビの取り扱いを決め、予約を受け付けているのは家電量販店業界2位エディオンと3位ヨドバシカメラ、5位ビックカメラのみ。業界トップのヤマダ電機や4位ケーズホールディングスをはじめ、多くの家電量販店は取り扱っていない。

 電機メーカーの営業担当者にとって全国で圧倒的な販売力を誇るヤマダ電機は無視できない存在だ。ヤマダ電機でいかに売ってもらうかがシェア争いのカギを握る。LGは「Win‐Winの関係が構築できれば家電量販店とはパートナーシップを組みながら展開していきたい」というオープンな姿勢なのだが、ヤマダ電機が扱わないのではシェア5%どころかブランド認知さえ難しいかもしれない。

 それにしてもなぜ、ヤマダ電機をはじめ家電量販店各社はLG製品を扱うことに及び腰になるのか。背景にはLGが高級モデルを投入したことにある。

 発売されるのは計10機種で22インチから55インチ。すべての機種にLEDバックライトを搭載している。目玉商品として投入する機種は47インチと55インチで3D対応。しかもテレビの厚さがわずか2.3センチメートルとデザインにもこだわった。想定価格は40万円と48万円で、日本メーカーの同等モデルよりも8%程度高い。

 また、売れ筋サイズの32インチの機種の想定価格は13万~15万円。10月に平均単価が約6万2000円(Gfk調べ)まで下がった状況からすれば、消費者にとっては高級モデルとして見られるはずだ。

「正直いって売る自信がない。ここまで国内メーカーのテレビが値下がりした状況で、日本市場においてはブランド力で劣るLGが高価格帯のテレビでシェアを伸ばせるとは思えない」とある家電量販店首脳は打ち明ける。

 加えて、現在の家電量販店は12月以降に家電エコポイントが半減されることに対応するため、メーカーから大量に売れ筋のテレビを仕入れたばかり。したがって多くの量販店にとっては「国内メーカーの商品が順調に売れる状況であえてLGを仕入れる必要はない」というのが本音なのだ。

 とはいえLGは世界のテレビ市場で韓国サムスン電子に次ぐ2位(14.1%、金額ベース、10年第2四半期。ディスプレイサーチ調べ)の強敵だ。

 また、日本は2大韓国メーカーが攻め込まなかったいわば最後の大市場。LGにしても満を持しての再参入であるだけに、日本メーカーが侮るべき相手ではないことは事実である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

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