――たしかに……。

前田 それだけじゃないんです。
 営業に行ったときに、向こうの決裁権限をもっている人が同席してくれることはほとんどないですよね?
 つまり、営業をかけた先方担当者に、社内の決裁権者を説得してもらわなければならないわけです。
 そのときに、こまごまと文字のつまった資料を決裁権者に渡して、「なんかよくわからなかったんですけど、こんな営業がありました。ざっと目を通していただけますか?」などと言われたのでは、全然ダメ。その決裁者は、100%資料を読んでくれません(笑)。
 ところが、インパクトのあるワンフレーズを先方担当者にインプットできれば、それを決裁者に伝えてもらうだけでも効果的。「営業資料を読んでおこうか」と思ってもらえるわけです。
 この「また聞き効果」を生むためにも、短くて強いワンフレーズは非常に重要です。
 マツコさんのワンフレーズだって、「マツコが昨日、こんなこと言ってたよ」などと、視聴者の伝聞で伝わって、ファンを広げているのではないかと思います。この伝播力がすごいんじゃないですかね?

横田 確かに「また聞きでも正確に伝わるように」というのは重要なポイントですね。強くて短いキャッチコピーをつけられるかどうかで、伝播力が全然違います。

マツコ・デラックスは<br />なぜ、大衆の心を<br />「わしづかみ」にできるのか?

説得力を生み出す「型」
――「数字」と「比喩法」

前田 そうですね。もちろん、マツコさんのようになるには才能が必要ですが、僕のような凡人でもある程度はできる。というのは、そんなフレーズを生み出すためにも「型」があるからです。

横田 「型」ですか?

前田 はい。まず、数字を使うことです。「売上倍増」と言うより、「売上2倍」と数字を使ったほうが、目に飛び込んできますよね?
 そのうえで、比喩を活用するといいですね。
『社外プレゼンの資料作成術』でも紹介しましたが、「比喩法」を使うと、数字のインパクトをより強めることができます。
 よく、「東京ドーム○個分の広さ」なんて表現しますよね?
 あれです。「1000km2」と言っても実感がわきませんが、「東京ドーム○個分」と聞くと「おお、すごい!」と実感してもらえるわけです。

――なるほど。それを、どんなふうに使うのですか?

前田 たとえば、僕が社内システムの営業マンだとします。
 そのためには、そのシステムを導入すれば、導入企業の経費削減になることを訴える必要がありますよね?
 そのときに、単に「経費削減」と言うよりも、「年間5000万円のコスト削減」と数字を使ったほうがグッときますよね?
 ここで、さらに比喩法を使います。
 たとえば、営業先の会社が営業マンを増強したいと考えているとします。
 ならば、「営業マン10人追加採用が可能」と置き換えてあげるわけです。

横田 なるほど、それは効果的ですね。つまり、相手のニーズに合わせて、数字を比喩的に読み替えてあげるわけですね?

前田 そうです。やはりプレゼンは、どこまで相手の立場に立てるかが大事ですから。相手がほしがっている数字を見つけるというのは、強いフレーズを生み出すうえで非常に重要なことだと思います。