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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

「中国はよいご近所さんになってくれるか」が注目されたAPEC

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第24回】 2010年11月17日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は横浜で開かれたアジア太平洋経済協力(APEC)についてです。APECそのものの重要課題は自由貿易圏の構築などですが、多くの英語メディアの関心事は「中国」だったように思います。中国と日本の関係は改善されるのかどうか。中国がアジア・太平洋地域で良いご近所さんになってくれるのかどうか。そういう意味で今回のAPECは町内会や、マンション管理組合の総会みたいだったとも言えます。(gooニュース 加藤祐子)

同じ町内会の揉めごと

 多くの多国間会議がそうであるように、具体的な成果というよりは「これからも前向きな話し合いを続けましょう」と参加国が確認し合ったことが最大成果だっただろうAPECで、多くの英語メディアが注目していたのは、一言でまとめるなら「中国」でした。なぜなら、日本が中国に対抗できずに凋落していった時、アジアは一人勝ちした中国のゴリ押しに牛耳られる地域になってしまうのかという、かなり切実な危機感があるからだと思います。

 中国は「good neighbour(よいご近所さん)」になれるのだろうかという表現を複数の記事で見るにつけ、アジアという町内で町内会長とお隣に住む大地主が揉めているのを、周りの住民がハラハラして見ている光景が浮かびます。池の向こうには町長さん。

 米『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙は「中国と日本、関係は改善しつつあると」という記事で、胡錦濤国家主席がAPECの各国首脳を前に、「近隣との良好な関係や友好という地域の方針」を重視していくと述べたことを、取り上げています。演説のこのくだりは、中国代表団が配布した英語テキストからとったという「the regional policy of building good-neighborliness and friendship」をそのまま翻訳しました。人民日報(日本語版)による演説の一部はこちらです。

 「good-neighborliness」とはつまり「良いご近所さん(neighbour)としてのふるまい」のことです(アメリカ語では「neighbor」、イギリス語では「neighbour」)。ゴミ出しのルールを守るとか、夜中に騒音を出さないとか、人の敷地内に勝手に入らないとか、共用スペースに自転車を置かないとか、町内会費を払うとか、町内清掃に参加するとか。

 記事によると、アジアのほかの国も中国と日本の関係を心配していると。13日に開かれた「APEC CEOサミット」ではシンガポールのリー・シェンロン首相が、領土紛争は「近いうちに消えてなくなるような問題ではない」のだから、「全体の関係に影響することなく、全体の雰囲気を悪化させることなく、この問題に対処することが大事な課題だ」と発言したと紹介しています。

 AFP通信も WSJと同じ胡主席演説を引いて、「中国は良いご近所さんになる方針と(China committed to being a good neighbour)」という、そのものズバリの見出し記事を配信。「ご近所さん」と訳したのが普段着すぎるなら、「中国は良い近隣でいることを重視と」というのがよそゆき版の訳です。

 AFPは、「豊かな天然資源が期待される諸島をめぐり、複数の国との領土紛争で日に日に強硬な態度をとり続ける中国の姿勢は、アジア地域全体に緊張感をもたらしている」、「多くのアジア諸国は、領土問題に関する中国の新たな強硬姿勢を警戒している。それだけに中国に対する重要なバランス役を期待される米政府が、再びアジアに関わろうとする姿勢は、アジア各国に歓迎された」と書きます。

 こうした記事を読んでいると、「アジア」というご町内が浮かび上がってきます。この町内ではこれまで約半世紀、「日本屋」という商店兼工場をもつお金持ちが町内会長として町内に物や仕事を提供していた。日本屋の隣には、大地主だがしばらくお家騒動などでパッとしなかった「中国屋」がいる。日本屋が商売の手を広げすぎたのと、後継ぎがなかなかできずに世代交代できずにいる一方で、中国屋はこのところ安売り商品を武器に急速に盛り返してきた。日本屋と中国屋は古くからのライバルというか、もとはといえば親類関係もあるというか、そもそもは日本屋が中国屋に読み書きソロバンを教わってのれん分けしてもらった関係でもあるだけに、何かと折り合いが悪い。過去には日本屋の若い衆が中国屋で乱暴狼藉を働いたこともある。そういう状況で、中国屋の台車と日本屋のトラックが衝突したりして、町内のほかの人たちがハラハラしている。池の向こうに住む「アメリカ屋」(別にジーンズショップではない)という町長さんも心配しているし、町内の人たちは「やっぱり町長さんのアメリカ屋さんに何とかしてもらわないと」と思っている――というのが、今のアジア地域なのでしょう。もっと身近な話にすれば、同じ町内や同じマンションの中で住民同士が「うちの敷地に勝手に菜園を作らないで下さいよ」、「何いってるんですか、あそこは先祖代々うちの庭ですよ」と言い合っている光景というか。

 (続きはこちら
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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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