去る11月3日 FRB(米連邦準備制度理事会)は、6000億ドルにも及ぶ長期国債の買い入れを発表。金利低下余地がなくなった中で、積極的な量的緩和に踏み込み、デフレ阻止に対する強い意思を見せた。先ほど『貨幣進化論』(新潮選書)を出版した岩村充早稲田大学大学院教授は、今後、先進国経済は高い成長は見込めず、物価は上がらないか、デフレ状態が常態化する――そういう経済構造の変化を前提とした金融政策を確立すべきだ――と主張する。その対応策が、貨幣に金利をつけることだ。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 原 英次郎)

貨幣の価値は
その国の財政が決める

いわむら みつる/1950年5月東京生まれ。74年東京大学経済学部卒業、日本銀行入行、ニューヨーク駐在員などを経て96年12月同行企画局兼信用機構局参事、98年1月早稲田大学大学院(アジア太平洋研究科)教授、2007年4月 研究科統合により早稲田大学大学院(商学研究科)教授。『新しい物価理論』(渡辺努と共著・岩波書店)、『企業金融講義』(東洋経済新報社)、『貨幣の経済学』(集英社)など著書多数。

――1990年代後半以降の日本に始まり、いよいよアメリカでもデフレ懸念が台頭しています。現代では、政府から独立した中央銀行が貨幣の量を調整することで金利を動かし、物価に影響を与えることができると思われていますが、著書のなかでは、政府・財政への信用が貨幣の価値を決めると、おっしゃっていますね。

 貨幣価値の拠り所は何かということについては、10年ほど前から考えてきました。私も、最初のうちは、普通の金融論の先生と同じように、デフレはマネーを大量に供給すればどうにかなると思っていました。

 しかし、日銀がマネーを大量に供給し続けても、物価は緩やかに下がり続けた。これは何かが変だと感じたのです。そういうときは、「基本」に返らないといけない。それで貨幣はどこからきたかを、考え始めたのです。