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自殺が日本の若年層で高止まり、死因1位の深刻実態

井手ゆきえ [医学ライター]
2016年9月16日
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2006年6月に自殺対策基本法が成立して10年が経過した。景気回復や国をあげての自殺対策もあり、一時期の総自殺者数が毎年3万人超という未曾有の事態からは脱却し、中高年・高齢者層の自殺者は減少に転じた。ところが、10~30代の若年層の自殺者はつい数年前まで増加し続け、現在も高止まりしている。折しも、今週16日までは自殺予防週間である。現在の自殺の現状や課題などを考えてみたい。(医学ライター 井手ゆきえ)

(写真はイメージです。本文とは関係ありません)

 「けれど午前3時になると、忘れてきた荷物のことすら死刑の宣告のように思えてくる。慰めの甲斐もなく──、そして魂の闇夜では、時刻は来る日も来る日も、いつも午前3時なのだ (崩壊1936)」。ちょうど80年前、ジャズ・エイジの旗手、スコット・フィッツジェラルドは、そう書き記した。

 そして、21世紀日本の思春期・若年成人にとっての「魂の午前3時」、つまり、絶望の時間は真夜中だ。

午前0時に一つの山
思春期・若年成人の自殺数がピークに

 自殺は明け方が多いといわれるが、曜日別、時間帯別の自殺者数を年代別に比較すると、思春期・若年成人(Adolescents and young adults)※の男性は午前0時台にはっきりとしたピークがある(図1)。女性は午後から夕方にかけて第一の波があるものの、やはり午前0時台の自殺者数は多い(図2)。なぜ、午前0時なのか、理由はわからない。

 「自殺」「死にたい」などの検索語に連動して検索エンジンに広告が表示され、「無料で相談を受け付ける」サイトに誘導する「インターネット・ゲートキーパー」システムを開発したNPO法人OVA(オーヴァ)の伊藤次郎代表理事は「昼間は学校や会社で社会的な生活を営んでいますから、一人になった時間帯に実行する傾向があるのかもしれません。女性は社会生活と家庭生活の両方の影響があると思います」と指摘する。

 女性の場合、家族を外に送り出して自宅で一人きりになった昼間の時間帯が「魂の午前3時」になる可能性があるのだ。

 伊藤代表理事は「むしろ“真夜中”“夏休み明け9月1日”など話題になりそうな特定の時間、特定の場所を取り上げ、大げさに強調するべきではありません。特に若年層はマスコミ報道の影響を受けやすい。情報を発信する側も心がけてほしい」という。

※思春期・若年成人世代(AYA世代):一般に15~39歳の年代を指す。もとはがん医療で使われる言葉。この世代のがん患者はその他の世代とは違う課題があり、異なる配慮が必要なことから、近年注目されている。実は、医療や社会福祉の手が届きにくい「空白」の世代でもある。置かれた状況が重なることから、この稿であえて使用した。

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 


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