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子どもの自殺を食い止められない
いじめ報道は「益」か「害」か?

小川たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]
2015年9月5日
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年間で子どもの自殺が一番多いのは夏休み明け――。内閣府が公表したこの調査結果は世間の親に不安を与え、改めて子どもの「いじめと自殺」に対して注目が集まっている。そうした時期にあえて考えてみたいのが、いじめ自殺に関する報道の在り方だ。いじめ報道は定期的に繰り返される。そして、いじめに警鐘を鳴らす報道が何度繰り返されても、いじめ問題といじめ自殺はなくならない。なぜなのか。大人たちは本当に解決に向けた議論を行っているのか。また、本当の問題点をマスコミは報じているのだろうか。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

いったい何度繰り返されるのか
やり切れない「自殺報道」の裏側

「年間で子どもの自殺が一番多い」と言われるこの時期。いじめ問題を取り上げるマスコミが多いが、いじめに真摯に向き合ってるものは少なく、ブームで終わっているのが現状だ

 いったい何度繰り返されるのか。そうやり切れない思いを抱える読者も少なくないはずだ。

 2013年に奈良県橿原市立中学1年の女子生徒(当時13歳)が自殺した事件で、9月1日、生徒の遺族らが同級生と保護者、市に対して合計約9700万円の損害賠償を求める訴訟を奈良地裁に起こしたことが報じられた。女子生徒はいじめ行為などを繰り返し受け、精神的苦痛を負っていたという。遺族側は学校に対しても、「いじめや自殺防止のための安全配慮義務に違反した」と主張している。

 9月に入り、「年間で子どもの自殺が一番多いのは夏休み明け」という内閣府の調査が話題に上り、改めて子どもの「いじめと自殺」に対して世間の注目が集まった直後の報道だった。

 それにしても、子どもの「いじめ自殺」に関する報道は後を絶たない。7月には、岩手県矢巾町で中学2年生の男子生徒がいじめを理由に自殺した。本人の「生活記録ノート」には「なぐられたり、けられたり、首しめられたり」と書かれ、同級生たちもいじめを目撃していた。「死ぬ場所は決まっている」という内容をノートに書いて提出した男子生徒に対し、担任は「明日からの研修楽しみましょうね」とだけ書いて返したことも判明している。

 また、宮城県仙台市では昨年秋、中学1年生の男子生徒がいじめを受けて自殺。学校は遺族の意向を受けて、生徒たちに「男子生徒は転校した」と説明していた。

 子どもたちばかりではない。4月には栃木県で子どものいじめを発端に「ママ友いじめ」を受けた母親2人が相次いで自殺するという悲劇も起きている。

 平成25年度『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』によれば、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は18万5860件。児童生徒1000人あたり13.4件となっている。また、自殺した児童生徒数は240人(小学校4人、中学校63人、高等学校173人)。このうち、「いじめの問題」を抱えていた生徒数は9人だったという。しかし、認知件数についても自殺の原因についても、学校側の隠匿などによって明るみに出ていないものが多いのではないかと指摘されている。

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小川たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]

1980年・東京品川区生まれ。フリーランスとして活動後、2008年から下北沢の編集プロダクション・プレスラボ取締役。働き方、教育、ジェンダー、性犯罪などを取材。ツイッターアカウントは@ogawatam


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