みずほ銀行を中心として、大手銀行が売りまくった為替デリバティブ商品が、多くの中小企業を苦境に追いやっている。円高の進行で多額の損失が表面化、倒産の危機に瀕しているのだ。なかには販売方法に問題があるケースも散見され、経営者たちからは怨嗟の声が高まっている。
「これからは間違いなく円安が続きますよ」
電子機器の輸入販売会社を経営するAさんが、メインバンクであるみずほ銀行の担当者から、こう言われたのは2006年夏のことだった。
円安になれば輸入価格は上がる。そのリスクを回避する手段として提案されたのが「通貨オプション」という、聞きなれない商品だった。
Aさんは金融取引の知識がほとんどなく、商品の説明は難しい用語ばかりで理解できなかったが、とにかく円安の恐怖ばかりを植えつけられた。そして、銀行に言われるがままに契約を結んだ。
ところが、08年9月のリーマンショックを境に状況は急変する。円高が進むなか、銀行からは毎月200万~300万円の支払いを求められ、約6年分の営業利益がわずか1年で吹き飛んだ。
契約期間は5年。みずほに解約を頼んだものの、違約金として約7000万円が必要と言われ諦めた。数千万円の個人資産をなげうって支払いを続けてきたが、ついに資産は払底。景気低迷の追い打ちで資金繰りに窮し、今夏には銀行への支払いができなくなった。
手数料ゼロに潜む大きな為替リスク
通貨オプションとは、為替デリバティブ商品の一種で、あらかじめ決めた価格で外貨を売買する権利のことだ。これを売買することで為替の変動リスクを回避できる。
契約時、銀行へ支払う手数料は大半の場合、無料だ。それどころか時には利益を得ることもできる。