
金利のある世界が到来し、日本のリテール金融は新たな戦国時代に突入した。長年の低金利下で「もうからない事業」とされてきた個人向けビジネスが、預金の重要性と共に一躍、成長戦略の主戦場へと変貌を遂げたからだ。三井住友フィナンシャルグループの総合金融サービス「Olive(オリーブ)」が先行し、三菱UFJフィナンシャル・グループなどが応戦の構えだが、総力戦に耐え切れずに没落必至の銀行も存在する。それは一体どこか。特集『銀行・証券・信託 リテール営業の新序列』の#1では、各社の戦力分析やランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、永吉泰貴)
先行者SMFGの電撃戦
「オリーブ経済圏」の無限拡大
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が2023年3月に投入した総合金融サービス「Olive(オリーブ)」が、業界の勢力図を塗り替える「台風の目」となっている。
アカウント数は当初の5年間で1200万口座という目標に対し、2年半たたずに半分の600万にほぼ到達。収益的にも預金とカード利用が想定を上回って伸び、計画を1年早めて2年目で黒字化を達成した。
その推進力は、PayPayやSBI証券といった各業界のトップ企業との「大連立」にある。自社サービスだけで顧客を囲い込むのではなく、パートナーと市場全体のパイを拡大させ、新たに生まれた収益を分け合うモデルだ。ソフトバンクとの提携では、VポイントとPayPayポイントの相互交換を実現し、延べ3億8000万人に及ぶ巨大なポイント経済圏を誕生させた。
SMFGを率いる中島達社長は「オリーブの売りは使いやすさとお得感。それにプラスになるサービスを今後も導入していく」と攻勢を緩めない構えだ。
中島社長によれば、オリーブは「リテールビジネス全体を変える」壮大な戦略の序章にすぎない。では具体的にSMFG内部で検討されている「次の一手」は何か。それに対し競合の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)やみずほフィナンシャルグループ(FG)は、どう応戦するのか。その戦い方や採用方針に、大きな違いが表れ始めている。
そしてメガバンクが総力戦で個人預金の争奪を繰り広げる中、それに追随できていない銀行も判明した。それはどこか。新リテール戦争の「勝ち組」と「負け組」を次ページで明らかにする。