日本で始まって50年。太陽光や風力などと比べて、長らく注目されてこなかった地熱発電に、再び脚光が集まりつつある。事前調査に時間がかかるなどのマイナス面はあるものの、安定的に発電できるなど、大きなメリットも持っている。
誕生から50年も経つのに
長らく成長が止まっていた地熱発電
いまからちょうど50年前の10月8日。国内初の商用地熱発電所として、岩手県八幡平市に建設された松川地熱発電所が運転を開始した。太陽光や風力発電と比べると認知度は低いが、実は日本は米国、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源国。にもかかわらず、発電設備容量で見ると、世界第9位にまで後退している。
つまり、資源量は豊富だが、発電設備の普及が進んでいないのだ。
松川地熱発電所の誕生以降、オイルショックなどが追い風となり、国内の地熱発電量は段階的に伸びた。しかし、1990年代半ば以降、ぴたっと成長が止まってしまう。
多くの再生可能エネルギーと同様に、火力や原子力と比べると、地熱発電の発電容量は小さい。たとえば、原発なら1基で100万キロワットクラスのものも多いが、地熱発電は大規模なものでも数万キロワット。原発の10分の1以下だ。発電容量の大きい火力や原子力のコストダウンが進んだこともあり、地熱を推進しようという機運が生まれなかったのだ。
しかし、2011年に起きた東日本大震災以降、潮目は変わった。12年7月からは再生可能エネルギーを電力会社が固定価格で買い取る「フィード・イン・タリフ(FIT)」制度がスタート。これによって、発電コストが高めの再生可能エネルギーでも採算が取れるようになり、20年ほども動きが止まっていた地熱発電も再び、前進し始めた。
地熱発電の方式は大きく分けると2つある。比較的大型なのは、「蒸気発電」と呼ばれる方式。地下の地熱貯留層にある、200~300℃超の高温天然蒸気で直接、タービンを回す方法だ。火力発電は、燃料を燃やしてお湯を沸かし、その蒸気の力でタービンを回すというのが基本的な仕組み。地熱発電は、地下から出てくる蒸気をそのまま活用する。だから燃料いらずなのだ。
蒸気発電は、数万キロワットクラスと、地熱発電としては大容量発電の実現が可能だ。一方、「バイナリー発電」と呼ばれる方式は、数十キロワットクラスから、最大でも5000キロワットまでの小規模設備となる。
バイナリーは、蒸気が150℃以下と低温の場合に適用される。低温蒸気では直接タービンを回すことができない。そこで、水よりも沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物など)と熱交換し、この媒体の蒸気でタービンを回す。