流通系クレジットカード会社として知られるクレディセゾンが、新事業を加速している。新券面のアメックスカード発行に加え、提携戦略も積極化させるなど、ライバル会社がキャッシング事業の収益悪化で苦しんでいるなか、一人、気を吐いている印象だ。業界の革命児であるクレディセゾンの積極策は「吉」と出るのか。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

 クレディセゾンの林野宏社長は今から3年前、米ニューヨークに出張し、アメリカン・エキスプレス(アメックス)のケネス・シュノールト最高経営責任者(CEO)と提携の大幅強化について初めて直接交渉した。

セゾン・アメックス・カードは、左上から時計回りにプラチナ、ゴールド、ブルー、パールの4グレードを用意

 林野氏の要求は、日本でのアメックスカード拡販を条件に、センチュリオン(写真参照)のイメージを全面的にセゾンカードで使わせてくれというものだった。センチュリオンは、古代ローマの百人隊長でブランド価値が高いことから、アメックスは原則として自社発行カードにしか使用を認めていなかった。

 そこではすぐに提携は実を結ばなかったが、その後クレディセゾンは、粘り強く日本市場でアメックスの普及に尽力。2009年度末は前年度末比で30%増加の100万人を獲得。こうした実績の積み重ねが奏功して、ついに今年6月、センチュリオンの使用を含む、日本市場でのアメックスカード拡販という大型提携にこぎ着けた。

 目標会員数は14年度末に500万人を想定。つまり年間80万人の獲得が必要で、通常、新規獲得会員数は年間300万人程度だからきわめて強気の計画だ。達成すればじつに3割弱をアメックスカードが占める計算になる。交渉術に長けるといわれる林野氏の面目躍如である。

 なぜクレディセゾンはアメックスカードに力を入れるのか。それはひとえに収益性が高いからだ。