ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

日銀の政策転換は矛盾を含み、実行も難しい

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第3回】 2016年9月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 日本銀行は、金融緩和の枠組みを改め、イールドカーブの傾きをスティープ(右上がり)にすることとした。具体的には、10年物国債の利回りをゼロ程度に誘導する。

 しかし、長期金利のコントロールは、これまで日銀自身が認めていたように、きわめて難しい。

 なお、今回の政策転換は、量的政策から金利政策への転換だと言われる。しかし、量的政策の側面が「オーバーシュートコミットメント」として残っており、矛盾を含むものとなっている。

長期金利を操作しようとする今回の措置は、従来の日銀の基本姿勢とは矛盾するものになっている

政策が行き詰まり
追い込まれた日銀

 日銀が政策転換を余儀なくされたのは、これまでの政策が行き詰まってきたからだ。とりわけつぎの3点で、日銀は、追い込まれた立場にいた。

 第1に、銀行の貸し出し利ザヤの縮小や年金・保険の運用難といったマイナス金利の副作用が無視できないほどになり、これらに配慮する必要があった。

 第2に、国債大量購入が限界に近づいていた。新規発行額の2倍もの国債を市場から買い上げる政策は、いつまでも続かない。日銀は、すでに発行残高の約3分の1の国債を保有している。

 第3に、長期金利までマイナスになると、銀行が国債を購入するのは非合理な行動になる。なぜなら、償還まで保有すれば確実に損失が発生するからだ。三菱東京UFJ銀行が国債市場特別参加者の資格を国に返上したのは、そうした事態への対応と解釈できる。この状態が続くと、銀行が国債ビジネスから撤退し、国債の円滑な発行に支障が生じる。

平坦になったイールドカーブを
右上がりにする背景

 新しい金融政策体系の中心は、「イールドカーブ」だ。これは、図表1に示すようなものであり、金利の期間構造を表す曲線である。ダイヤモンド・オンラインの連載「新しい経済秩序を求めて」において、すでに第74回(2016年8月18日)の図表3、4や第62回(16年5月19日)の図表1、3、そして第49回(16年2月11日)の図表2、3などで示した。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

 日本が直面している課題は、実体経済をいかにして改善するかである。それは金融政策によって実現できるものではない。
 金融緩和に依存して長期的に衰退の道を辿っているヨーロッパ大陸諸国と日本。それに対して、新しい情報技術をつぎつぎに開発し、高度なサービス産業に特化して成長しつつあるアメリカとイギリス。両者の差は、イギリスのEU離脱によって、具体的な 形を取りつつある。
 日本はいま、基本的な成長のパタンを大きく変更しなければならない。これは、純粋な研究開発だけの問題ではない。企業の仕組みや社会全体の構造が重要な役割を果たす。

「野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る」

⇒バックナンバー一覧