プーチンが12月に訪日することが決まり、日ロ関係が動いている。日本政府もロシア政府も、訪日時に成果を出すべく、活発に交渉していることだろう。日本側最大のテーマは「北方領土」だ。一方、経済危機まっただ中のロシアは、「経済協力」の大きな進展を期待する。今回は、北方領土問題の展望と、日ロ関係の現状と未来について考えてみよう。
「2島先行返還」か、「4島一括返還」か
悩ましい北方領土問題
9月23日付読売新聞に、「北方領土、2島返還が最低限…対露交渉で条件」と題した、とても興味深い記事が載った。引用してみよう(太線筆者、以下同じ)。
<政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。
平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。安倍首相は11月にペルー、12月には地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談する。こうした方針でトップ交渉に臨み、領土問題を含む平和条約締結に道筋をつけたい考えだ。
複数の政府関係者が明らかにした。択捉、国後については日本に帰属するとの立場を堅持する。その上で、平和条約締結後の継続協議とし、自由訪問や共同経済活動などを行いながら、最終的な返還につなげる案などが浮上している。>
整理してみると、
1.歯舞群島、色丹島を引き渡してもらう。
2.平和条約を締結する。
3.択捉、国後については平和条約締結後に継続協議し、最終的返還を目指す。
Photo:Kremlin/Sputnik/Reuters/AFLO
つまり、「まず歯舞、色丹を返してもらい、平和条約を締結」(あるいは、平和条約を締結し、歯舞、色丹を返してもらう)、「択捉、国後については、継続協議」。これは、鈴木宗男氏が主張している、「2島先行返還論」と同じだろう。
ちなみに菅官房長官は、この記事について「そうした事実はまったくない」と明確に否定している。しかし、読売新聞が、「複数の政府関係者が明らかにした」と書いているように、「日本が大きく譲歩する可能性がある」という話は、いろいろな方面から流れてきている。総理も「今までとは違うアプローチで解決を目指す」と言っている。「今まで」とは、「4島一括返還論」のことだろうから、「違うアプローチ」が、「2島先行返還論」だったとしても不思議ではない。
ところで、「4島一括返還」は、なぜ実現が難しいのだろうか?これを知るために、ロシア側が北方領土問題をどう捉えているか考えてみよう。
日本外務省のホームページには、以下のように説明されている。
・ソ連は、日ソ中立条約を破って対日参戦した。
・ポツダム宣言受諾後の、1945年8月28日から9月5日までに、北方4島を占領した。
それで、日本側は「不法占拠だ!」と捉えているのだが、ロシア側の意識は、日本とまったく異なっている。ロシア人と話していて感じるのは、彼らには、「固有の領土」という言葉の意味がわからないということだ。