貧困叩きをするのは貧困層
相対的貧困レベルでも飢えることも

鈴木 ただ、今回NHKの貧困女子が子どもの貧困の当事者じゃないのかっていう議論については、確実に当事者ですよ。だけど報道するにあたって、うまく翻訳ができていませんよね。単に映像や本人の言葉だけを放送するのではなく、今の彼女の貧困状況や、それによる今後の貧困リスクも補足で説明すべきだった。

 なぜ彼女が苦しいのかをクローズアップすべきだった。そのための翻訳や演出をすることが「ドキュメンタリーじゃない」というなら、そもそも貧困の当事者はドキュメンタリーにしたら駄目です。

橘 今回の炎上騒動については、社会の冷たさを改めて実感しました。ランチに行って、アニメが好きで、趣味を持っていたら貧困として認めない、といった風潮は感じます。

なかむら・あつひこ
1972年、東京都生まれ。アダルト業界の実態を描いた『名前のない女たち』(宝島社)、『職業としてのAV女優』(幻冬舎新書)、『日本の風俗嬢』(新潮新書)など著書多数。フリーライターとして執筆を続けるかたわら介護事業に進出し、デイサービス事業所の代表を務めた経験をもとにした『崩壊する介護現場』(ベスト新書)が話題に。最新作は『貧困とセックス』(イースト新書)、『漫画ルポ 中年童貞』(リイド社)。

中村 やはり貧困者を執拗に叩くのは、同じ貧困者。SNSでいくらでも攻撃できるから、攻撃は弱者に向かう。根本の原因は、低賃金で働いている人が多すぎることでしょう。非正規で1人暮らしをしたら、もう相対的貧困のラインなわけで、膨大な数の人が不満を抱えている。

 アラを探して「これで貧困を語るな」と攻撃的になる人が現れるのは分かりきったこと。NHKが未成年児童を的にしちゃったのは、まあ、まずいよね。

橘 でも貧困ってああいうものだと思いますけどね。

鈴木 高いスマホを持っていても、毎日空腹だって子はいますからね。

橘 私がこのあいだ話を聞いた子は、親がネグレクトで、家の電気も止まっている状態。親が帰ってこないし、お金も置いていかないから、いつも飢えているんですよ。で、給食が始まればお昼は食べられるねって聞いたら、「給食費を払ってないから学校で給食出してもらえない」と。

 その子との待ち合わせ場所が駅近くのホテルの喫茶店だったのですが、「お金は出すからなにか注文しなよ」って言ったら、「本当にいいの?」って3回ぐらい聞かれて、やっと注文してくれた。その子の唯一のライフラインがスマホで、それがあったから、私とも繋がることができたんです。

鈴木 食べ物を我慢しても通信だけはつなげているというのは、今の貧困者の当たり前の姿ですよね。ただ、子どもの貧困はそもそも、親の経済状態とは関係ないものじゃないかと思います。

 彼女の親はおそらく相対的貧困層でしょう。だけど親の所得にかかわらず、自分で稼ぐ手段を知らない子どもは、金を置かずに親が返ってこなかったら生きて行けません。家出をしても無一文ですから、その日から餓死の危険もある絶対的貧困状態。つまり、食べ物も現金も置かずに親が数日帰って来なければ、親に所得があろうとなかろうと、絶対的貧困です。