2013年に始まった生活保護基準引き下げに対して、全国27都道府県で、生活保護で暮らす人々約900人が、国に引き下げ撤回と賠償を求める訴訟を行っている。どのような人が、何を目的として、原告となっているのだろう?
日本全体に広がっていく
「生活保護引き下げ反対」への緩やかな協力
2013年8月から、生活保護費のうち生活費分(生活扶助)の引き下げが行われた。平均6.5%、最大10%、特に子どものいる世帯を狙ったかのような引き下げは、2013年8月・2014年4月・2015年4月と3段階にわたって、既に実行されている。この他、人数に対する生活費の割増率(逓減率)の引き下げなど、目立ちにくい引き下げが数多く行われている。
この引き下げに対して、2014年2月の佐賀県を皮切りに、全国の27都道府県で集団訴訟が行われている。訴訟に先立って自治体に審査請求を行った生活保護の人々は約1万人、訴訟の原告になった人々は約900人。人数でいえば、史上最大級の行政訴訟かもしれない。
しかし訴訟を行っている原告たちに対しては、「税金で生きさせてもらっているくせに、国を訴えるなんて」という反感や、「引き下げられても死んでいないんでしょう? 引き下げ前の生活保護基準がゼイタクすぎたのでは?」「“ジンケンハ”が“弱者”に運動させているのでは?」という疑問も、ネット空間で数多くぶつけられている。
2013年、最初の引き下げ反対に賛同した222団体のリストを見ると、「党派的」と見られがちな支援団体や当事者団体も、たしかに少なからず含まれている。しかし児童養護施設の運営母体・必ずしも生活保護にフォーカスした活動を行っているわけではない障害者団体・キリスト教の教会など、「右」「左」の区分けになじまない団体も数多い。直接、生活保護で暮らしているわけではなくても、生活保護基準引き下げを「私たちの問題だ」「他人事じゃない」と考えている人々は、決して少なくないのだ。
生活保護引き下げ違憲東京国賠訴訟弁護団の事務局長であり、東京の引き下げ反対訴訟の代理人を務めている白木敦士さんから見て、この訴訟の原告となった生活保護の人々を動かしている原動力は、何だろうか?
「生活保護基準引き下げに対して『受け入れられない』と声を上げること自体の重要性ではないかと思います」(白木さん)
生活保護の人々は、どのように訴訟に踏み切ったのだろうか?