ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
オヤジの幸福論

コストを最優先してもよいのか?

後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 AB未来総研 所長]
【第58回】 2016年11月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 前回は、自分にあったゴールを定めて、そのゴールに対する進捗状況で管理すべきで、ベンチマークに対する勝敗はゴールの達成とはあまり関係がないというお話をしました。投資経験のあるオヤジ世代の皆さんの多くは、自分の資産形成を評価する際に投資信託のベンチマーク対比の勝敗を気にしているかもしれませんが、東証株価指数(以下、TOPIX)に勝っていてもTOPIX自体のリターンが悪ければ資産は増えておらず、資産形成は順調とは言えないですよね。この“ベンチマーク対比の勝敗”は資産運用の常識の中で、私がおかしいと思っていることの一つなのですが、実はおかしいのはこれだけではありません。「コストが低い=良い」という風潮もおかしいと思います。

 そこで今回は、デフレ・マインドの染みついた日本人が陥りやすい“コスト優先神話”について問題提起したいと思います。

その(1):安い食材からおいしい料理がつくれるのか?

 雑誌やネットで投資信託に関するアドバイスを調べると、特に確定拠出年金を中心に、多くの人が「コストが低い=良い」、つまり「パッシブ運用(インデックス運用*)がアクティブ運用よりも良い」と主張しています。もちろんクオリティが同じものならばコストが安いに越したことはありませんが、実際はどうなのでしょうか?

 ここで、レストランにたとえて考えてみましょう。料理人は食材の目利き能力がありますので、同じクオリティのものの中から極力安いコストのものを探すことができます。また料理の腕もありますので、たとえコスト優先で食材のクオリティが高くなくても、相応のクオリティの料理をつくることができます。

 次に料理のスキルがない一般人が食材を仕入れる場合を考えてみましょう。まずクオリティを見極めるだけの目利き能力がないので、低コストを最優先して食材を選んでしまう人も多いと思います。安い魚、安い肉、安い野菜… 結果として料理人よりもコストを抑えて食材を入手できるかもしれません。でも、その安い食材でうまく料理ができるのでしょうか? 料理人であればクオリティの低い食材からクオリティの高い料理をつくることができるかもしれませんが、一般人には難しいですよね。

 この“たとえ”に関しては、多くの方が同意されると思います。では、これを資産運用に当てはめてみたらどうでしょうか? まず目利き能力は、おそらく一般の投資家で自分に適した投資信託をしっかり選べる人は少数だと思います。したがって、料理と同様、わからないからとりあえず一番安いもの、という流れで多くの投資家がパッシブ運用を選んでいると思われます。それでも、上手に組み合わせるスキルがあれば、腕の良い料理人と同様、クオリティの高い運用ができるでしょう。でも残念ながらどの資産にどの程度投資すべきかを理論的に考えられる一般の投資家はやはり少数です。結果として、“安い食材から構成されたおいしくない料理”のような内容の運用をしている人が多いと思われます。

*TOPIXのような指数と同じリターンを目指す運用

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 AB未来総研 所長]

慶應義塾大学理工学部 非常勤講師。1997年慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。97年株式会社富士銀行(現 株式会社みずほ銀行)にて、法人向け融資業務に従事。2000年みずほ総合研究所に勤務し、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに従事。06年一橋大学大学院国際企業戦略研究科にてMBA取得。同年4月アライアンス・バーンスタイン株式会社に入社。共著書に「企業年金の資産運用ハンドブック」(日本法令 2000年)、「年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-」(東洋経済新報社 2004年)などがある。

 


オヤジの幸福論

年金支給が70歳支給になるかもしれない。公的年金ばかりか企業年金も怪しくなっている。銀行の金利も微々たるもの。平均寿命が延びるほどに老後が不安になってくる。自分で自分を守るためにどうしたらいいのか。オヤジの幸福のために自分年金について教えます。

「オヤジの幸福論」

⇒バックナンバー一覧