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オヤジの幸福論

不透明な時代の資産運用のあり方

後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 AB未来総研 所長]
【第56回】 2016年8月29日
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 6月23日のイギリスの国民投票の結果が欧州連合(EU)離脱となったことを受け、翌24日以降、世界の株式市場は大きく混乱しました。事前の予想では離脱と残留が拮抗しておりどちらにもなる可能性があったのですが、開票当初の残留優勢との情報が最終的に離脱となったこともあって、世界各国で株価は大きく下げ、為替も大きく円高になってしまいました。

 今年は年初にもアメリカや中国の景気減速に対する懸念などから大きな下落があり、しかも日本では日銀がマイナス金利に踏み切るなど、資産運用を取り巻く環境は著しく不透明さを増しているように見えます。

 このような中、せっかく年初に「今年はNISAをフル活用するぞ!」と意気込んだオヤジの皆さんも、「こんな状況では怖くて資産運用なんてできない」と考え、躊躇してしまっている人が多いのではないでしょうか?

 確かに株式市場は混乱しているように見えますが、少し長い期間で見てみると確実にリターンを得ているのです。したがって、このような中でもしっかりと長期積立投資ができている人は、着々と資産を形成することができているのです。そこで今回は、日々の動きを気にせず積立投資をすることが、どれだけ大事なのかを見ていきたいと思います。

行動バイアス:損失回避傾向と短期評価 

 50代のオヤジの皆さんの資産形成の目的のほとんどが「自分年金」だと思われます。この世代になると子育てや住宅購入などといった大きな支出が一段落しており、老後に向けて今までよりもペースを上げて資産形成を進めている時期ではないでしょうか。「自分年金」ということは、亡くなるまで投資し続ける場合、投資期間は30年や40年という長い時間となりますし、そうでなくても、少なくても10年くらいはあるはずです。10年と言えば超長期とまでは言えませんが、十分に長期運用と言える期間だと思います。であるならば、本来であれば日々の動きはまったく関係ないハズです。でも人間にはどうしても日々の動きが気になってしまい、結果として長期で正しい投資行動がしづらい悲しい性、いわゆる「行動バイアス」があるのです。では、その行動バイアスとは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

 まず一つには、人間には損失を被るのが大嫌いという性質があります。このことを損失回避傾向と言いますが、これはノーベル経済学賞を受賞したカーネマン等が主張したプロスペクト理論に基づいています。プロスペクト理論では、人間はある金額の利益から感じる喜びと、利益と同じ金額の損失から感じる苦痛を比べると、損失からくる苦痛のほうを2.25倍大きく感じるということが明らかになりました。この損失状況に陥りたくないという性質のため、人間はリスク資産に投資したがらないのですし、投資しても利益が出たらすぐに利益を確定して投資を止めてしまう傾向があるのです。

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後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 AB未来総研 所長]

慶應義塾大学理工学部 非常勤講師。1997年慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。97年株式会社富士銀行(現 株式会社みずほ銀行)にて、法人向け融資業務に従事。2000年みずほ総合研究所に勤務し、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに従事。06年一橋大学大学院国際企業戦略研究科にてMBA取得。同年4月アライアンス・バーンスタイン株式会社に入社。共著書に「企業年金の資産運用ハンドブック」(日本法令 2000年)、「年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-」(東洋経済新報社 2004年)などがある。

 


オヤジの幸福論

年金支給が70歳支給になるかもしれない。公的年金ばかりか企業年金も怪しくなっている。銀行の金利も微々たるもの。平均寿命が延びるほどに老後が不安になってくる。自分で自分を守るためにどうしたらいいのか。オヤジの幸福のために自分年金について教えます。

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