ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
今週のキーワード 真壁昭夫

「5%の法人減税」は、巡り巡って本当に国民の生活を向上させるか?

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第156回】 2010年12月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

企業の税負担を軽減すれば
日本経済のパイは本当に増えるか?

 企業の競争力を高めたい経済産業省と、厳しい財政状況の下税収を減らしたくない財務省の対立に対して、菅総理は珍しく自ら、法人税の実効税率を5%減税することを決めた。

 この決定は、納税額が減る企業にとっては朗報だが、国の台所を預かる財務省にとってはかなり厳しい決定だ。財務省は、早速減税分の財源探しに取りかかることになる。

 本来であれば、消費税率の引き上げを持ち出したいところだろう。しかし、民主党政権には、先の参院選で敗北した記憶が鮮明に残っているため、それをすぐに持ち出しても実現性は低いはずだ。

 そこで、現在候補に挙がっているのが、所得税の控除額の引き下げや、相続に係る増税だ。これらは、いずれも個人から徴収する税を増やすものである。今回の決定は、結果的に個人に対して増税を行ない、それを原資にして企業の税負担を軽減する構図になる。

 問題は、法人税減税によってわが国経済が拡大し、パイが増えたことによる個人の分け前が、結果的に増税分を上回るか否かだ。最終的に、増税された分の見返りがないと、個人は増税された分だけ丸損をさせられることになる。

 果たして今回の法人税減税は、わが国経済全体をよくするだろうか、それともその逆だろうか?

 最も重要なのは、「企業の行動」がどうなるかだ。企業が、税負担減少というチャンスを使って競争力を身につけ、経済を成長させることができればよい。しかし、負担減少分を懐に貯め込むだけでは経済は拡大せず、かえって個人部門が割を食ってしまうだけという状況になることも考えられる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


今週のキーワード 真壁昭夫

経済・ビジネス・社会現象……。いま世の中で話題となっているトピックス、注目すべきイノベーションなどに対して、「キーワード」という視点で解説していきます。

「今週のキーワード 真壁昭夫」

⇒バックナンバー一覧