実利か理想か?アメリカと欧州で『投資スタンス』の差が見える、テーマ型投信のいま【投資信託の最前線】

2025年、日本の投資信託市場は活況を呈している。新NISA効果もあり、5月までの資金流入額は昨年同時期を上回る約7.6兆円を記録。低コストのインデックス投資信託に加え、「宇宙」「テクノロジー」「ロボティクス」といったテーマ型投資信託の人気も継続している。このテーマ型投資の人気は日本だけでなく、欧州でも広がりを見せているが、世界的にどのような状況なのか? 最新の調査データを基に、テーマ型投資の現状と可能性について解説する。

国内の投資信託の資金流入は2024年超えのペース
テーマ型投資信託の人気も継続

 2025年の年初来の国内投資信託市場への資金フローは、5月までに約7.6兆円と大規模な資金流入となりました。新NISA元年となった2024年の同期間の資金流入額が約7.0兆円だったので、昨年を上回るペースとなっています。

 流入額上位の投資信託をみると、幅広い国々に投資するグローバル株型や、米国株型の低コストのインデックス投資信託の存在感がさらに高まっていることがわかります。一方で、アクティブ投資信託では、「宇宙関連」に加えて、「テクノロジー」「ロボティクス」といったテーマ型(あるいはセクター特化)の人気も継続しています。こういったテーマ型投資信託は、日本の投資信託市場で特に人気化しているわけではありません。欧州でもその活用は広がっています。

 そこで、今回は世界の投資家のテーマ型投資信託への投資状況を見てみましょう。

 BNPパリバ・アセットマネジメントとBNPパリバのホールセール・バンキング(CIB)部門は、調査会社コーリション・グリニッチ(Coalition Greenwich)と提携し、「Thematics Barometer」というテーマ型投資に関する投資家の選好をまとめたリサーチを行っています。2025年の調査は世界中の機関投資家や販売会社を対象に、2025年2月から4月にかけて行われました。2020年、2023年、2024年に続き今回で4回目の調査となります。

 2025年2月から4月は株式相場の低迷時と重なったため、テーマ型投資への需要がやや落ち込んでいる可能性もありますが、以下調査で明らかとなった主なポイントを見ていきたいと思います。

欧州とアジアでテーマ型投資信託を積極的に活用!
北米は米政権交代を受けて利用が後退

 2025年の調査の1つ目のポイントは、テーマ型投資の利用状況が高い結果になったこと。とりわけ欧州で、その結果は顕著でした。「現在テーマ型投資を行っている」と回答したのが、欧州で49%、アジアで41%、北米で9%となっています。欧州では、「現在テーマ型投資を行っている」人の割合が2023年と2024年の60%超からはダウンしたものの、高水準を維持しています。

 欧州に次いでテーマ型投資の活用が進んでいるのがアジアです。アジアの「現在テーマ型投資を行っている」人の割合は、2024年の39%から小幅ながら上昇しており、2025年は41%になっています。9%と最も利用状況が低かった北米に関しては、調査対象企業数が限定的ではありますが、米政権交代を受けて、「再生可能エネルギー/クリーンエネルギー」などのテーマ型投資の利用が後退している可能性が示されました。

「再生可能エネルギー」などが高い人気を継続
メガトレンドなので長期の成績に期待

 2つ目のポイントは、欧州では引き続き「サステナビリティ・テーマ」に対する強いニーズが確認されたこと。具体的なテーマでは、「再生可能エネルギー/クリーンエネルギー」の人気が地域や投資家のタイプを問わず最も高くなっており、次いで「気候変動適応・緩和」のテーマも高い人気を維持しています。

「イノベーション」や「ディスラプション(創造的破壊)」に関連したテーマでは、「人工知能(AI)」が圧倒的な人気となっており、2025年は79%まで上昇しています。また、「ヘルスケア・イノベーション」のテーマにも高い関心が見られました。

 ちなみに、テーマ型投資を行う目的は、「投資リターンの向上」「ポジティブなインパクトを実現しサステナブルな成果に貢献すること」の2つが引き続き上位となりました。 北米では73%の投資家が「投資リターンの向上」を第1位に上げており、この点が2025年における北米投資家の需要後退につながった要因とも言えそうです。一方、欧州では「サステナブルな成果に貢献すること」が42%で動機の1位となっています。

 人気のテーマは、世界経済のメガトレンドに沿うもの。時に人気が行き過ぎることもあるものの、長期では成績も期待できます。上手に活用すれば投資リターンの向上が狙える点で注目といえるでしょう。

藤原延介さん藤原延介(ふじわら・のぶゆき)●1998年三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパンを経て、2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社。マーケティング部 部長。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど、約25年に渡り資産運用や投資信託に関するリサーチや投資啓蒙に従事。慶応大学経済学部卒。
◆投資信託の最前線
20年超にわたって投資信託動向を分析してきた藤原延介氏が、投資信託の最新動向やニュースを取り上げて、わかりやすく解説! 2024年から大幅拡大したNISAでは、投資信託での運用が不可欠に。でも「どうやって選べばいいの?」「組み合わせ方法は?」などわからない人も多いのでは? このコラムで投資信託の売れ筋やトレンドの変化をチェックすることで、投資信託の選び方や資産運用法などが見えてきます。
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<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025>
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