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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

大ドンデン返し!名古屋市議会リコール逆転成立が残した重大な教訓

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第15回】 2010年12月21日
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 まるで筋書きのない大河ドラマを見ているようだ。名古屋市で展開中の「庶民革命」のことだ。

 市選挙管理委員会(選管)の厳格化された再審査で11万人分を超す署名が「無効」とされ、不成立に終わったとみられた市議会解散の直接請求(リコール)が、大逆転を果たした。大量の異議申し出(約3万2000人分)に対する再審査で、「無効」から「有効」に転じる署名が相次ぎ、1万5217人分にのぼった。これにより、確定有効署名数は36万9008人分に達し、解散の是非を問う住民投票の実施に必要な法定数を上回ることになった。土壇場での逆転成立である。リコールを求める市民の執念が、立ちはだかる厚い壁に穴をあけたといえる。

 署名集めを展開した「ネットワーク河村市長」は12月17日、市選管にリコールの本請求を行った。また、河村たかし市長も20日に辞職願を市議会議長に提出し、来年2月6日に出直し市長選と市議会解散の是非を問う住民投票、それに愛知県知事選のトリプル投票となることがほぼ固まった。

 名古屋の「庶民革命」は、09年4月に河村市長が登場して始まった。当初は市民税減税と地域委員会創設、そして議会改革(議員報酬の半減など)をめぐる市長と議会のバトルだった。議場での台本なし打ち合わせなしの白熱したやり取りに、多くの市民が目を奪われた。これまで見たこともない新鮮な姿だったからだ。互いに譲らぬ激しい攻防が繰り広げられ、市民は市政への関心を膨らませていった。事態がどう展開するか予測もつかず、引き込まれていったのである。

 そうした過程で、これまで知らされずにいたことや見えていなかったことが明らかになってきた。じっと黙って眺めているだけでは気がすまない――。自らも舞台に上がりたいと思う市民が現われ、市長と議会のバトルに割って入るようになった。

 もともと市民は市政の観客ではなく、一人ひとりが主役のはず。やきもき、うずうずしていた市民の心にリコールの署名運動が火をつけた。こうして「名古屋の奇跡」と評された46万5千余りもの署名が集まった。確かに市長の音頭で始まった議会リコール運動だが、実際に大汗をかき、時間を費やして署名を集めて回ったのは、名古屋の市民たちである。それも、誰かに強要された訳でもなく、報酬目当てで行ったものでもない。それどころか、ほとんどの人が法定数をクリアすることは無理と予測した「無謀な試み」だった。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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