California independence:カリフォルニア独立

カリフォルニア州が米国から独立して建国する――。こんな動きが出ている。
一見すると「カリフォルニア独立(California independence)」は荒唐無稽なシナリオだ。だがむげにはできない。トランプ政権との対立があまりにひどくなり、州内で独立に向けた住民投票(voter initiative)の準備が始まったからだ。カリフォルニアはリベラル派の牙城であり、民主党の大票田でもある。当然ながら共和党のトランプ政権とは相いれない。
合言葉は「カリグジット(Calexit)」だ。英国の欧州連合(EU)離脱「ブレグジット(Brexit)」をもじった表現であり、「カリフォルニアの米国離脱(California’s exit from the U.S.)」を意味する。
今年に入ってシャーリー・ウェバー州務長官が住民投票のための署名運動(signature-gathering campaign)にゴーサインを出している。7月22日までに54万7000人の有権者から署名が集まれば、2028年に住民投票が実施される。ちなみに、54万7000人は22年の州知事選挙の総投票数の5%に相当する。
署名運動の発起人であるマーカス・エバンス氏は「トランプ政権の誕生でカリフォルニア独立の気運が高まった」とみる。1月にカリフォルニア南部を襲った山火事に触れながら、次のように語る(米CBSテレビのインタビューから引用)。
“Donald Trump, when he said, I don’t know if I want to give federal assistance to you guys because I don’t really like you and your politics, and he wanted to play games when people are dead, homeless, and beside themselves after a natural disaster ー I think that caused such a wide divide that he can never heal it. ”(山火事に巻き込まれ、多くの州民が命を落としたり家を失ったりした。にもかかわらずドナルド・トランプは「カリフォルニアを支援したくない。大嫌いだから」と言い放った。この結果、二度と修復できないような分断が生じてしまった。)
ここにきてトランプ政権による“カリフォルニアいじめ”に拍車が掛かっている。米「ニューヨーク・タイムズ」紙の調べによれば、3月27日の集中砲火は前代未聞だった。
・米教育省。トランスジェンダー学生保護の関連州法が連邦法違反だとして調査を開始。
・米教育省。不法滞在の学生を受け入れている州内の大学に対する財政支援を一部停止。
・米司法省。入学選考で人種的マイノリティーを優遇する州内の有名大学への調査を開始。
・米健康福祉省。同様の理由で州内のメディカルスクール(医科大学院)への調査を開始。
・米農務省。ギャビン・ニューサム州知事に対しトランスジェンダー関連の教育支援見直しを表明。
・米司法省。銃携帯許可証の発行遅延を巡ってロサンゼルス郡保安局への調査を開始。
トランプ氏の言葉を借りれば、カリフォルニアは「頭のおかしい狂信的左派(radical left lunatics)」の巣窟だ。独立国家だと仮定すると、国内総生産(GDP)で世界第6位に入るほど経済的に豊かであるだけに、なおさらねたまれやすい。
住民投票が可決されたとしても、自動的にカリフォルニア独立が実現するわけではない。米国からの分離(secession)が可能かどうか調査する委員会が発足するにすぎない。1869年に米最高裁判所は「州は一方的に分離・独立する権利を持たない」との判断を下している。
住民投票が米国の分断を一段と深める結果につながらなければいいのだが……。