昨年、円安の終焉と日本株の低迷をズバリ予測し、見事的中させた中原圭介氏が、いま先進国で経済・金融政策がうまく機能しなくなった理由を解き明かす。
2000年以前の常識が通用しなくなった
私は2000年以降の世界経済、厳密には中国がWTOに加盟した2001年以降の世界経済を、それまでの世界経済とは分けて考えるようにしています。便宜的に2000年以前を「プレ・グローバル経済」、2000年以降を「グローバル経済」と意識して、経済を分析するようにしているのです。
もちろん、現実の経済は決して断絶することなく連続性を持って動いているので、2000年を起点に明確に区切ることは難しいかもしれませんが、当時12億7000万人もの人口が資本主義社会に組み込まれた意味は非常に大きいといえるでしょう。とりわけ教育水準が高く、かつ労働力が安い中国を資本主意義社会が包摂することによって、世界経済は全体の規模を拡大させただけでなく、平均の成長率を引き上げることができたからです。
しかし、その副作用として、先進国の成長率が低下していくことは、避けられない状況となりました。
グローバル経済が全体で成長するには安い労働力が原動力になっている一方で、その安い労働力はかつて良質な雇用といわれた先進国の雇用を次々と奪っていったからです。そのうえ、中国が投資主導の経済成長を進めるなかで、原油をはじめとしたエネルギー資源の需要が爆発的に増加したために、人々の実質的な所得が減少することとなったのです。
確かに、米国の住宅バブル崩壊や世界的な金融危機の後遺症もあるのは事実ですが、その後の景気回復の過程で人々が生活の豊かさを実感できないでいるのは、雇用の問題が深刻化するのに加えて、エネルギー資源の高騰によるインフレが人々の可処分所得を減少させているという現実があるわけです。
経済学の分野ではそのことに着目せずに、GDPやインフレを重視する姿勢が常識として変わらないままでいるのは残念なことです。