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ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。
【第32回】 2016年11月3日
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原田まりる [作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター]

やばいっ、キルケゴールが鬱モードだ。【『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』試読版 第23回】

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17歳の女子高生・児嶋アリサはアルバイトの帰り道、「哲学の道」で哲学者・ニーチェと出会って、哲学のことを考え始めます。
そしてゴールデンウィークの最終日、ニーチェは「お前を超人にするため」と言い出し、キルケゴールを紹介してくれます。アリサに、哲学のことを教えてくれたキルケゴールでしたが、どうも今日のtwitterのツイートはおかしいようです。
ニーチェ、キルケゴール、サルトル、ショーペンハウアー、ハイデガー、ヤスパースなど、哲学の偉人たちがぞくぞくと現代的風貌となって京都に現れ、アリサに、“哲学する“とは何か、を教えていく感動の哲学エンタメ小説『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』。今回は、先読み版の第23回めです。

まあ、いいだろう。アリサが超人に近づくヒントが何かあるかもしれない

 夏のような晴れやかな日が続いたと思いきや、最近はすっかり梅雨らしく、雨音で目が覚める日が多くなった。

 雨の日は、気分も沈む。

 晴れた日なら、学校帰りやバイト帰りに、どこかへ出かけようという意欲も湧いてくるのだが、最近は学校とバイトの往復をする以外は、まっすぐ家に帰っている。

 京都市内は、電車の路線が数本通っているが、電車よりも市バスを利用する方が主流だ。もっというと自転車が一番主流ではないだろうか。

 遊びに行く時も自転車があると便利だが、駐輪場が少ないため、お店の近くに駐めていると撤去されてしまうことが、しばしばある。撤去されてしまったら、京都市の端にあるかなり遠い場所まで取りに行かなくてはならないので、自転車移動もそう楽なことばかりではない。

 しかし、最近は雨が続いているせいで自転車に乗る機会もなくなり、バス移動になった。そうなると、自転車移動の楽さが身にしみたりもするのだ。

 「なんか最近、雨ばっかりで嫌になるね」

 「アリサ、天気に振り回されているようでは、超人にはなれんぞ」

 ニーチェはスマホを眺めながら、そう呟いた。ニーチェは嫌なことがあっても、どんよりと落ちこむことがあまりない。

 私の勝手なイメージではあるが、哲学者というと、みんな理屈っぽくて性格が暗い、ネガティブ、自殺しそう、という勝手なイメージを持っていたので、ニーチェのポジティブさにはいつもびっくりする。

 暗い性格の哲学者もいるのだろうけれど、ニーチェのような自信満々な哲学者も意外とたくさんいるのかもしれない。

 そんなことを考えながら、ニーチェを見ていると、ニーチェはいきなり顔をしかめた。

 「やばいっ、キルケゴールが鬱モードだ」

 「えっ、どうしたの?」

 「このあいだ会ったキルケゴールいるだろう、このツイートを見てくれ」

 そう言ってニーチェはスマホを目の前に差し出してきた。

 するとそこには、数分置きに「まじで絶望」「ほんと死にたい」「絶望した」「#絶望してる人RT」と絶望ツイートが大量に投稿されていたのだ。

 「えっ、大丈夫なのこれ!?」

 「いや、彼には前から、こういうところがあるのだ。センシティブというか、病みやすいというか」

 「前会った時は全然、病んでる感じなかったよ」

 「俗にいう気分屋というやつだ。まあ大丈夫だろう」

 ニーチェは慣れているのかあまり気にかけていなかったものの、少し心配になる。何か悩みがあるのかもしれないし、話を聞いてみた方がいいんじゃないだろうか。

 哲学者であるキルケゴールに悩みを聞くというのもおかしな感じがするが、一人では解決できないこともあるだろうし、一度誘ってみよう。

 「ねぇ、ニーチェ、キルケゴール誘ってみようよ」

 「けれど一人で答えを導き出せるタイプだぞ、彼は」

 「まあ、そうかもしれないけど、彼くらいの哲学者が何に悩んでいるか知りたいし」

 するとニーチェは前髪を指にくるくると絡め、しばし考えこんだのちに

 「まあ、いいだろう。アリサが超人に近づくヒントが何かあるかもしれない」

 と、キルケゴールに連絡をしてくれた。

 気分が落ちこんでいるので、連絡が返ってこないかと思いきや、すんなり「では行きます」とのことだったので、私たちは雨の中、烏丸御池にある、老舗の甘味処へと向かった。

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原田まりる(はらだ・まりる) [作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター]

1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、 哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。 著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある。


ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。

17歳の女子高生・児嶋アリサはアルバイトの帰り道、「哲学の道」で哲学者・ニーチェと出会います。哲学のことを何も知らないアリサでしたが、その日をさかいに不思議なことが起こり始めます。キルケゴール、サルトル、ショーペンハウアー、ハイデガーなど、哲学の偉人たちが続々と現代的風貌となって京都に現れ、アリサに、“哲学する“とは何か、を教えていきます。本連載では、話題の小説の中身を試読版としてご紹介します。

 

「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」

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