中国人民元(CNY/RMB)の対ドルの下落が止まらない。最近、6年ぶりの元安水準を付けた。長く守られてきた1ドル=6.7元のラインも割って下落している。2008年9月のリーマンショック以降、緊急対応で固定した6.82~6.83元のレベルが見えてきている。
中国の通貨制度改革は、変動相場制と取引通貨の加重平均のバスケット通貨に向かうものの、その途中で経済危機が発生すると、緊急対応で対ドル固定相場制に戻す、ということを繰り返している。何かあった時は、やはりドルなのである(中国人民元について詳しくは、拙著『通貨経済学入門(第2版)』(日本経済新聞社)ご参照いただきたい。かなりのページを割いて、仕組みや歴史を始め、詳しく解説している)。
この今回の下落は、当面続くと考えている。
まずは米ドルと人民元のファンダメンタルズを見てみる。今回の元安は、現在の日本円安と同様に、米国の中央銀行FRBの利上げ観測が大きいせいなのも事実だ。中国はGDPこそ6.7%の成長率となっているが、輸出が前年対比で約1割落ちており、国内の生産過剰を支え切れない。また不動産バブルも膨らんできており、その崩壊の危険度が上がってきているとともに、引き締め政策も実施している。
10月に入ってからの
下落が大きいのはなぜか
とくに10月に入ってからの下落が大きいのには理由がある。それは10月1日に、中国人民元が念願であったIMFの通貨SDRに組み込まれたのが大きな要因となっているのだ。
9月後半の人民元の動きは安定していた。これは、正式にSDRに組み込まれる前に不安定な動きをしていると、国際通貨の代表(お墨付き)であるSDRに参加する資格なし、として取り消しになるリスクがあったからだ。そのため、中国当局は大量の人民元買いドル売りの介入を繰り返してきた。それは外貨準備高(ドル)の減少で分かる。それが10月1日に正式にSDRに組み込まれると同時に為替介入も停止。非常に分かりやすい動きで、必然的に人民元は下落したのである。
問題はこれからだ。経済では急激な動きは望ましくなく、通貨もそうだ。すでに当局(国家外貨管理局)は、顧客に売却する外貨に制限を付けるなど、資本規制を強めている。