「今年の漢字」や「流行語大賞」をはじめ、年末年始には2010年を総括する様々なトピックが話題に挙がった。それらのトレンドを分析すると、言い知れぬ不安を覚えて古き良き時代を懐かしむ一方、今の閉塞状況から抜け出すための「新たな何か」を探してさまよう人々の姿が、浮かび上がってくる。新旧の価値観が対立、あるいは並立する「時代の臨界点」で揺れた2010年の日本。2011年、我々はどこへ向かうのだろうか?(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

もう疲れてしまった――。
道行く人々の声からわかる「2010年の世相」

「先が見えない不安ばかりで、とにかく疲れた」「バブル時代に戻りたい」「2011年が新しい門出の年になることを祈りたい」

 2010年暮れ、ニュース番組の街頭インタビューでは、道行く人々がこんな感想を語る姿が映し出された。長引く不況で給料が減り、節約生活を強いられている人々の多くがこのように感じるのは、無理からぬことだろう。

 これまで変わらないと信じていたものが崩れ去り、予測もつかない新たな時代がやって来るかもしれない――。言い知れぬ不安を覚えて古き良き時代を懐かしむ一方、今の閉塞状況から抜け出すための「新たな何か」にも期待せずにいられない。激動の時代を生きる我々の心は、そんな二律背反の状態にある。

 いつの世も、社会を動かす原動力となっているのは、こうした人々の「心」だ。そこで今回は、2010年の世相に人々の気持ちがどのように反映されていたかを分析し、2011年の行方に思いを馳せてみよう。

 2010年を象徴するキーワードと言ったら、いったい何だろうか? 年末年始にかけて、2010年のトレンドに関するランキングが、色々なメディアから発表された。冒頭の人々のコメントにも表れている通り、トレンド分析のデータからは、古い価値観と新たな価値観が対立、あるいは並立している様が見てとれる。