ザッポス最強伝説を読み解く短期集中連載、好評につき連載予定を拡大してお届けする。追加の回の最初となる今回は、会社と社員全員との強い結びつきを重視し、結果としてそれが全社一丸のザッポスの強さにつながっている点に注目する。

 この変化の速い時代に、激変する競争環境や新しい技術に対応するため、どんな企業でも多かれ少なかれ、自社に変革が必要と考えている。日本企業も同様だ。しかし、そうした試みの多くがうまく行っていないように見えるのはなぜだろうか。考えられる仮説のひとつは、社員がそうした会社の変革の必要性に本心から共感し、変革を推進していないのではないか、ということである。

 ザッポスの属するインターネットビジネス分野であれば、その変化の激しさは言うまでもない。ザッポスのCEO(最高経営責任者)トニー・シェイが執筆した『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』には、創業期の資金難、リーマンショック後の急激な景気後退期に行われたレイオフを通じてもなお、社員と会社の結びつきが強まり、全社一丸となって変革に取り組む様子が仔細に描かれている。

 ザッポスのように全社一丸となって、変化に対応し変革を推進するにはどうすればいいのか。前回、ザッポスの企業文化の徹底について書いたが、そのコアバリューにも「2.変化を受け入れ、変化を推進する」があり、関心を持つ読者も多いようだ。今回は社員と会社のつながりの強さ(エンゲージメント)を重視するザッポスの経営と、急成長との関係をみながら、考えてみたい。

会社と社員の結びつきが際立つザッポス、最下位の日本企業

 社員と会社との一体感が注目される背景について、一つの調査結果を紹介したい。コンサルティング会社タワーズペリン(現在はタワーズワトソン)の調査によると、米国の29%に対し、日本はわずか3%の社員しか会社へのエンゲージメントを持っていない。

 同社によれば、エンゲージメント(会社・組織との一体感やつながり)が高いということは、会社の成長を実現するために社員一人一人が貢献への意欲を持っている状態を意味し、「従業員のエンゲージメントが企業業績を牽引する」と結論づけている。