高齢夫のED治療を妻たちが歓迎しない理由写真はイメージです、本文とは関係ありません

早々に果ててしまった夫だが
がっかりしない妻 

「あっ、あ~」

 か細い嘆声が寝室に響いた。声の主は夫・正毅さん(仮名・68歳)。 久々の夜の営みだったが、勃起する前に果ててしまったのだ。

 しばしの静寂の後、妻・直子さん(仮名・58歳)は無言で起き上がり、電気をつけた。漏れ出た体液は早くも透明になり、直子さんの太ももからツーッと水のように冷たく垂れて行く。

「ごめん…」

 うなだれたまま、謝る正毅さん。股間の一物は力なくうなだれ、白髪交じりの陰毛の中に、身を隠すように縮こまっている。

 その姿が、あまりにも気の毒で、直子さんには、かけるべき言葉が見つからない。

 だが、怒りはもちろん、がっかりする気持ちもまったくない。

 (もうすぐ70歳だもの、もうセックスは卒業ってことでいんじゃないの。それにしても、EDっていうのは、硬くならないだけかと思っていたけど、勃起も何もしないうちに射精してしまうこともあるのね…)

 淡々としたものだ。

 というのもだいぶ前から、直子さんは性交渉が苦痛だった。月経もこのところ間隔が開くようになり、そろそろ閉経間近であろうことを自覚している。夫への愛情がなくなったわけではないが、エロチックなDVDを見せられたり、卑猥な言葉を耳元で囁かれても、正直興奮しない。むしろ(いい年して…)とおぞましくすらある。

 なんとか自分を励まして交渉には応じてきたが、快感はほぼ皆無に等しく、ただひたすら正毅さんが早く果ててくれることを願い、感じている演技をしてきたのだ。挿入時間の短縮化をはかるべく、積極的に口での愛撫も行った。(なんて淫らなんだ…)正毅さんは悦んだが、そんなんじゃない。気持ちはまったく逆。とにかく、正毅さんを悲しませないために、努力してきたのだった。