マネジャーによる過度の管理・干渉を防ぐには、ホラクラシー導入のような組織改造をせずとも他の方法がある。それは「スポンサー、オーナー、要件」という基本概念を踏まえ、適切な権限移譲を行うことだ。


 自主管理型の組織が持つ魅力の1つは、「過剰管理という病からの解放」が約束されることだ(自主管理型組織の詳細は、我々のHBR論文「ホラクラシーの光と影」を参照されたい)。

 しかし、この病に効く薬は他にもある。

 どんな処方箋が有効なのかを検証する前に、過剰管理(マイクロマネジメント)とは一体何か、何が人をそうさせるのかを考えてみよう。一部の見解では、それは生まれつきの性格や、稚拙なトレーニングによるリーダーシップの問題とされる。しかし、それだけではない。むしろ問題は、権限委譲がまともに機能していないことなのだ。

 マネジャーが目標達成の権限を部下にうまく委譲するには、仕事の「要件」に関するオーナーシップ(当事者権限)を与える必要がある。ここでの要件とは、締め切りやその他の制約を伴う成果目標を指す。それを託された「オーナー」は、特定の制約下でどう要件を達成するかを考える。たとえば「この予算内に納める」「これらの方針に従う」「この種の意思決定は自分が承認する」などだ。

 かたやマネジャーは、「スポンサー」の役割を担い、要件やオーナーを変更でき、オーナーの仕事を取り巻くコンテキストも変えることができる。ところが、やるべき作業を命じたり、仕事の進め方を指図したりすると、スポンサーではなくマイクロマネジャーと化してしまう。

 目標と責任が複雑に絡み合った組織では、過剰管理は伝染しやすい。部下の成果が上司の成果を左右し、それが指揮系統の上部にまで続いていく。そのため、「誰もが成果を出せ」という重圧があらゆる階層で生じるわけだ。

 スポンサーシップとオーナーシップの境目は、理論的には容易に理解できるが、現実の不透明な仕事環境では見えにくい。ゆえに、「とにかくやってみよう」となりがちだ。まずは部下を信用し任せてみる。そして、求められる成果を部下がしっかり理解しているか、それを成し遂げる能力があるかを検証していくことになる。

 しかし今日、その検証能力は飛躍的に高まっている。職場がますます「スマート化」されガラス張りになるおかげで、スポンサーはオーナーの一挙手一投足を監視できてしまうからだ。

 オフィスのトイレにはRFID(無線自動識別装置)を搭載した石鹸容器が備え付けられ、去り際の社員に手洗いを忘れぬよう「名指し」で呼びかけるご時世だ(英語記事)。スポンサーが過剰管理に陥る可能性はどれほど高いことだろう。監視したい、そして口出ししたいという誘惑は非常に強く、気づけば時遅し。実に簡単に、過剰管理へと至ってしまうのだ。

 では、過剰管理に陥るのを避けるにはどうすべきだろうか。それには、委譲する要件の中に以下の要素を含めることだ。さもないと、目に入るものすべてを管理しようとして、具体的な作業にまで過剰に注目してしまうおそれがある。