経営×総務
経営総務研究所
【第3回】 2016年12月8日
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ダイヤモンド・オンライン編集部

グローバル企業の総務と日本企業の総務はこんなに違う!

 日本の終身雇用制度というところにも関係していると思いますが、いろいろな人材がいる会社組織の中で、第一線での活躍は難しいけれど、でも社員として守りたいという人材の受け皿的な部署となりやすい。すると必然的にキャリアを作る場所になっていかないケースも多いようです。

 そういう総務には市場競争力がつきづらい。競争力というのは、人材力、効率化、営業力。市場に常にさらされ、人材も流動化しているグローバル企業の総務部門の組織は、その競争力があります。「コーポレートサービス」という役割に面白さを感じてどんどん頑張って給料も上がって、この仕事ができてよかった、と言っている人も多いんです。

 そういう、キャリアをアピールできるマーケットが確立できていないことが大きいですし、そもそも、総務人材やキャリアを形成するような企業の体制や意識がないことが、グローバル総務との差を生んでいる要因だと思います。これ、本当に根本的な問題なので、すぐの解決は難しいですが。

 たとえば政府などが提言している「限定正社員」(専門性が限定されている正社員)などが、より本当の理解を得て浸透し、「総務職務に限定した正社員」のキャリアができてくると思います。そうなればもちろん「プロ」(建築士+ホテルマン)ですから、野球と同じでどの球団からもオファーが来ますし、自分のキャリア市場も会社内という狭い世界ではなく、世の中全部の企業で働ける力がつきます。

 ちなみに私の場合は外資系という領域でそのキャリアを長年積んでいましたが、今「日本企業」という新しい領域ドメインからオファーが入り、さらにその市場が広がった、という見方もできます。「何でも屋?」と言われる総務でも、その同じ職能を誰よりも長く、深く追求して地道に続けることのメリットがここにあります。

 企業ももっと積極的に外部のプロ人材を登用し、その総務プロを起点に社内のレベルアップを図るという戦略を取るべきだと思います。外部から来た人材がいきなり自分より上司になることは頻繁に起き、そういうことに慣れていない企業では部内で拒否反応も大なり小なりありますが、その外部から来た人材がプロでありリスペクトを得て、皆へ良い影響力を与えていけば問題ないはずです。

 そういうリーダーシップの振る舞いも含めてプロなのですから。自分もまだ未熟ですが、常にそうありたいと思って行動しています。自らリスクを取って実践しないと総務キャリア市場の成長と流動化は起きないので。

――組織の人材の受け皿機能として総務を捉えるのではなく、経営が総務にもっと意識を向けて、会社の成長を促す部署として力を入れていったときに「経営はこんなに変わる」ということがあるはずだ、と我々も思っていて、この「経営×総務」はそれを考える場にしたくて作ったんです。

 今日、金さんに伺った中で、ファシリティマネジメントの視点で会社全体の生産性を上げる、といったことを実行するのは、やはり総務のプロとしてかなりのスキルが必要になってくると思います。でも、「総務財布」という概念を持って、ムダを圧縮して他の有効なところにお金の使い道を振り分ける、というような、削るべきところ・使うべきところに対して戦略を持ってデザインしていくことは、今の日本の総務でも十分やれることだし、経営を変えることにつながる大きな役割だと思うんです。

 ただ、現実問題として、経営者自身がそこに気が付く場や機会がほとんどないですよね。

 今、ファシリティマネジメントのISO化(国際標準化)という流れがあるので、それをきっかけに今後、日本企業、経営者もいよいよそこを無視できなくなってくるかもしれません。もうそれは社内移動型の総務責任者でマネージできるレベルではありあません。そこで経営者がグローバル企業で標準化されている国際基準を知ることになると、あまりの違いに驚くのでは…。

――総務の成果が、数字や金額で明確に示されるものが出てくると、経営の強さと総務などのバックオフィス部門の強さとの関連性が意識されていくようになっていくと思うんです。そうすると、日本の企業経営が変わっていくのではないか、と。そこは我々も引き続き「経営×総務」でいろいろな議論をしていきたいと思っています。

 今日はありがとうございました。

(撮影/倉部和彦 構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 山出暁子)

 

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「総務部」を単なる社内の何でも屋的役割ではなく、社内リソースを統轄する戦略部署とすることで会社は変わる――。COO、CFOと並ぶ「CHRO」が誕生している人事部と同様、総務にもCクラスを誕生させることが求められるのではないか。総務を、経営会議に参加する、経営戦略の一端を担う「戦略総務」化することで企業がどのように変わるか、経営に資する総務の在り方を探る。

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