Photo by Yoshihisa Wada

 先週、ヤマトグループの「第3のイノベーションへの挑戦」である「バリュー・ネットワーキング」構想について紹介した。ヤマトグループにとって、羽田クロノゲートに象徴される大規模な物流施設は、B2CだけでなくB2B分野にも新たな事業の可能性を開くものだ。

サービス開発の起点は「受け取るお客さま」視点

 誤解を避けたいのは、第3のイノベーションでヤマトグループは業態転換を図ろうとしているわけではないということ。その本質は、ヤマトグループのネットワークを社会インフラとして捉え直し、よりオープンな姿勢で物流の新たな事業機会を創造し、お客さまにさらに寄り添っていける存在になろうということだ。

 それが小倉昌男さんの、「サービスが先、利益は後」という思想を受け継ぐことになる。主役となるのがラストワンマイルを担う約6万人のSDと呼ばれるセールスドライバーだ。

 ヤマト運輸が営業所からお客さまのご自宅なり事業所なりへのラストワンマイルのネットワークを他社に委ねることはない。なぜならば、そこにこそイノベーションの萌芽があるからだ。ヤマト運輸は、お客さまの目線で考え、それをビジネスモデルにすることに徹底的に注力してきた。さらに言えば、その起点は荷物を出されるお客さまというよりも、荷物を受け取るお客さまの視点から発想されている。

 振り返れば、ヤマト運輸の「便利さの進化」は、まずスキー宅急便やゴルフ宅急便、クール宅急便などのさまざまな配送商品を拡充するところから始まった。次いで時間帯お届けサービスや翌日配送サービスエリアの拡充などサービスの質の向上へとステップアップした。

 現在は、情報管理へと進化している。例えばお客さまとメールでやり取りして受取時間を指定したり、コンビニで受け取れるように変更したりできるサービスだ。荷物を受け取るためのお客さまのストレスを極力解消するのは、まさにITを使ったデータサービスによる利便性の向上だ。