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長内 厚のエレキの深層

米ハイテク産業に吹くトランプの逆風は日本の家電には追い風か

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第18回】 2016年11月22日
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トランプ氏の腹心、スティーブン・バノン氏が「シリコンバレーにはアジア人CEOが多すぎる」と発言したことは、米国のIT・ハイテク産業にとって脅威になりそうだ。それは日本の家電メーカーにどんな影響を及ぼすのか

トランプ次期大統領の政策が
シリコンバレーに落とす影

 アメリカのリベラル層にとって、トランプ政権の誕生は日本人の想像以上にショックなようだ。ハーバード大学では、ショックを受けた学生に大学の心療内科の受診やカウンセリングを勧めている。ショックが大きいというのは、それだけ意外だったからでもある。

 意外な結果と言えば、日本でもトランプ次期大統領の政策に関して、不安視する声が上がっている。ただ、ほとんどの識者がトランプ当選を当てられなかったのだから、現段階でトランプが日本にとって本当に脅威となるのか、それとも選挙キャンペーン中の発言はあくまで選挙用のもので、実際にはそれほど怖くないのかといったことはわかるはずもないので、この連載でもトランプの話はスキップしようかとも考えた。

 ただ、トランプ氏の腹心でチーフ・ストラテジストのスティーブン・バノン氏が「シリコンバレーにはアジア人CEOが多すぎる」と発言したことはアメリカのIT・ハイテク産業にとって大きな脅威になるかもしれないと思い、今回はそのことについて筆者の考えを述べることにしたい。

 シリコンバレーに台湾・中国などのアジア系ベンチャー企業が多いのは、もはや必然とも言える。アメリカは1990年代以降、製造業そのものを放棄し、モノをつくらなくなった。その代わり、新しい技術開発やユニークな事業のコンセプトの開発に特化し、半導体におけるファブレス&ファウンドリーモデルのように、アメリカが開発を担当し、アジアは詳細設計と製造を担当するという役割分担が生じた。

 現在のIT・ハイテク産業は、シリコンバレーとアジアが一体となったエコシステムを形成している。トランプ氏からは「iPhoneをアメリカ国内で生産しろ」という発言まで出ているが、組み立てだけならアメリカでもできるだろう。

 しかし、液晶やカメラの撮像素子は日本でつくっているし、半導体やバッテリーなどは韓国や台湾でつくっている。アメリカでつくるとしても、ノックダウン方式の最終組立だけになってしまうだろう。その仕事にはそれほどの雇用創出効果はないし、むしろアップルというアメリカを代表する企業の経営の足を引っ張るだけだ。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

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