「○○力」アピールでは、採用されない

 「先生、ESを何度も書いていたら、何が何だか分からなくなってきました。ちょっと聞いてもらっていいですか?」

 ESというのはエントリーシートの略である。私が就活をしていた15年前は、ハガキ一枚送っておけばたくさんの企業から説明会などに呼んでもらえたが、今ではセミナーに行くにも面接に呼ばれるにも、まずはエントリーシートを書かないといけない。要は自己紹介&自己PRの書面だと思えば問題ない。

 「最初の頃は、『物事や組織をまとめる力』が自分の強みだと思っていたんです。でも、友達からは『調整力が強み』だと指摘されて、たしかにそれは自分としてもしっくりくるんですよねえ~。でも、こういうのってどう書けばうまく伝わるだろうと思い始めると、何だか分からなくなりました」

 「君に調整力があるかどうかは知らないけど、どう書いても、ある程度は伝わると思うよ。ただ、今悩んでいることは、実は就活でそれほど重要ではないよ」

 「えぇっ!?」

 「企業はそういう『○○力(○○できる能力)』で、学生を採用しているのかな?」

 「うーん…」

 「組織をまとめる力、あるいは調整力をアピールする学生って世の中にどれぐらいいるだろうね? 結構な数いるんじゃない? もし企業が『○○力のある学生』という基準で採用をしているなら、みんなそれをESに書いちゃうよね。そしたら、募集人数の上限を越えちゃうんじゃない?」

 「たしかに…そうかもしれませんね…」

『部活で部長をやっていました』という学生は、うちの大学だけだと数十人程度しかいない。だけど、全国の大学を合わせるとものすごい人数だよね。TOEIC800点持っている学生も、周りでは少ないかもしれないけど、全国合わせるとごまんといる。学生の多くは、就活はスペックをアピールすべきと思っているけど、それは勘違いなんだよ」

 「スペックって何ですか? あの~、日本語でお願いします