尖閣諸島、北朝鮮砲撃、TPP(環太平洋経済連携協定)という難題に直面し、外交でも内政でも戦略のなさを露呈した菅直人首相、民主党政権への、国民の不信は募るばかりだ。たとえ“小沢切り”に踏み込んでも、払拭できまい。春の統一地方選挙を控え、政局にも発展しかねない。東アジアの緊張、財政赤字の膨張は深刻度を増す。今、日本政治に必要なものは何か。政権〈史・私・四〉観の執筆陣が徹底討論する。(「週刊ダイヤモンド」副編集長 遠藤典子)

左から、エドワード・J・リンカーン氏、田中秀征氏、冨山和彦氏、藤原帰一氏、 Photo by Masato Kato

──菅政権の支持率低迷が続いている。内閣改造や、いわゆる“小沢切り”によって、再度、浮上を図ろうとしているが、奏功するか。

「世論は菅政権の致命的な欠陥に気づき始めた」
田中秀征/1983年衆議院議員初当選。93年新党さきがけ結成。細川政権で首相特別補佐、第1次橋本内閣で経済企画庁長官。著書に『判断力と決断力』(ダイヤモンド社)、『舵を切れ』(朝日新聞社)など。福山大学客員教授。
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田中 支持率は、“小沢排除”の流れでも低下し続けている。たとえここで“小沢切り”という最後のカードを切ったとしても、多少回復しようがあくまでも瞬間的なものだ。低落傾向の要因は菅政権の本質的な問題にある。政治とカネの問題は重要ではあるが、もはや中心的な問題ではない。

藤原 小沢一郎氏を排除する一方で、企業献金の受け入れを決めた。その後、菅直人首相は政治とカネへの取り組みを宣言したが、これでは小沢氏を切っても世論の期待は満たせない。小沢氏も菅氏もたいして違わないということになれば、切っても意味はない。

田中 民主党の支持率20%台は、自民党の支持率10%台に値する。自民党は基盤と政策の方向性がしっかりしているから、首さえすげ替えれば持続できるからだ。しかし、民主党は違う。現在の20%台の支持率は、10%台で退陣した竹下政権や森政権と同じ状況で、政権運営などできない。そうすると、大連立話が浮上する。

 自民党には小沢切りを果たせば、受け入れるという輩もいる。だが、連立というのは互いの力が弱くなったときの手段だ。自民党と民主党の大連立というのは、私に言わせると、老いた虎と張り子の虎の寄り合いで、まったく通用しない。結局、衰弱と劣化に拍車をかけるだけだ。4月の統一地方選挙がすんだら今度は公明党を狙うのだろうが、それが見え見えだから、全然ダメだ。

藤原 公明党に対する連立工作においては、政治とカネの問題を軸にして、引き込むべきだった。小選挙区制度の下、公明党は苦しい立場にある。とはいえ、菅・仙谷ラインとつながることにも抵抗がある。だからこそ、公明政治連盟以来ずっと掲げてきた政策を実現できると誘えば、公明党も受け入れやすかったはずだ。しかし、手順もなければ、シグナルの送り方も下手、フォローアップもなく、失敗に終わった。