「ユニクロ」と「しまむら」は、カジュアル衣料専門店の両雄である。ユニクロを展開するファーストリテイングは2016年8月期で想定外の減益だったが、今期挽回を目指す計画だし、しまむらは17年2月期で最高益を目指している。両社とも一見順調そうだが、どちらのブランドも国内での成長の先行きには不透明感が漂っている。果たして、隘路はないのか。これまで両社が総合スーパーや百貨店から顧客を奪取して成長してきたように、急台頭するネット通販サイトにシェアを奪われ、歴史は繰り返すことになりはしないか――。(流通ジャーナリスト 森山真二)
一転大幅な減益となった
ファストリの16年8月期
2016年8月期のファーストリテイリング(以下、ファストリ)の決算。15年8月期で過去最高益を上げており、好業績が期待されていた。ところが、一転大幅な減益となった。果たして16年8月期の減益は一過性のものだろうか。海外のユニクロ事業はひとまず置いておくとして、注目されるのはファストリの営業利益の8割をたたき出し、利益貢献度が高い国内ユニクロ事業の業績だ。
国内ユニクロ事業の既存店売上高(開店から1年以上を経過した店の売上高)は16年8月期は前期比0.9%増と微増にとどまった。かろうじてプラスだ。しかし、中身が問題だ。昨年、一昨年と数度にわたる値上げで客単価は同5.8%増と伸びた。しかし、客数は4.6%減と落ち込んだ。商品価格を上げたため客離れが起こり客数が減った格好だ。
あるスーパーの幹部は「何度かの値上げで値ごろ感が失われ、結果として客離れにつながったのではないか」と見る。ユニクロの売り物は「こんな品質の商品がこんな価格(低価格)で買えるのか」(ユニクロ)だったが、それが、"こんな価格"でなくなった。顧客は相対的な安さを感じなくなったということだろうか。
ヒット商品不発もユニクロへの来店動機につながらない一因だ。フリース、ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウンと数年ごとにヒット商品を生み出してきた同社も最近は不発だ。業界では商品開発力の低下を指摘する声もある。一発ヒットが出れば、それが吸引力になって集客につながるが、それもなく、ただただ、2度にわたる値上げの後遺症だけが残っている格好だ。