インターバル規制を作ったら、
評価軸が変わる

佐々木●そこまでは行かないけど、とにかくどんなものが来ても3回は突っ返す、という上司もいましたね。

小室●オレは議論を尽くしたぞ、というエビデンスということでしょうか。

佐々木●しかも、本人はどこが悪いのかもちゃんと見ずに返すんですよ。まだ検討が足りない、とか言って。教育だと思っているんですね。

小室●仕事の速い人ほど、バカを見てしまいますね。

佐々木●そうなんです。だから僕なんか、1回返されて、次また返されて。どうせ見てないんだろうと、3回目も同じものを出したりして(笑)。やっぱり見てなかった。

オフィスの「ムダとり」で<br />仕事の生産性を上げるには<br /> 佐々木眞一(ささき・しんいち)
トヨタ自動車株式会社 顧問・技監
1990年、トヨタ モーター マニュファクチャリング UK 株式会社 品質管理部長の仕事の中で自工程完結の着想を得て、1996年、トヨタ自動車株式会社 堤工場 組立部部長時代に工場の自工程完結を実践。2007年 ホワイトカラーの自工程完結を全社に展開し、2009年、取締役副社長就任。2015年、『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』を上梓。2016年 顧問・技監就任。2016年、『トヨタ公式 ダンドリの教科書』監修を務める

 僕は定時を過ぎると帰ってしまう人間だったので、帰り際に持っていくと機嫌の悪い上司もいましたね。ところが、8時、9時まで残って持っていくと、よく頑張ったな、マルだ、となる。

 結局、中身を見ていないんですよ。それが管理だと思ってしまっている。そういう人が、けっこう多かった。逆にいえば、上司たるものの役割認識という訓練がされていないんですね。

小室●日本以外の多くの国は、インターバル規制がちゃんとありますよね。最終的な勤務終了後から翌日の開始時までに、一定時間のインターバルを保証することで、従業員の急速時間を確保しようとする制度です。これが今、必要になってきていると思うんです。

 多くの会社のコンサルティングをすると、今おっしゃったような、時間をかけている部下がかわいいという気持ちを、捨てきれない上司が多いんです。

 でも、インターバル規制があったらどうなるか。もし、職場で夜の11時、12時まで全員残して残業させたら、翌日はみんな午後にならないと来られなくなります。

 そんなリスクを冒してまで、残業しろと上司が言うかどうか。でも、今はインターバル規制がないので、夜遅くまでも粘ってくれているし、翌朝の朝礼にもビシっと来る。これが、かわいい部下になっている。

 もし、インターバル規制が入ったら、翌朝からビシっと仕事をしてもらうためには、前日もちゃんと短い時間で計画的に仕事を終えてないといけない。短い時間で成果をあげる部下こそがかわいい、となる。

 全体のルールが変われば、上司がかわいいと思う部下、評価したいと思う部下像も変わるはずなんです。