政府紙幣は突飛な話ではない
量的緩和も効果は同じ
ある人から、お札を刷って国の借金を帳消しにできないかと聞かれた。これは、後で詳しく述べるが、ある程度はできる。
また、これと大いに関係があるが、かつて筆者が政府紙幣の発行を主張したこともあり、しばしばそのメリットとデメリットを聞かれる。
実は、政府紙幣の発行と日銀の量的緩和は、経済効果という観点から見れば、両者はほぼ同じである。
日本の経済学者は、財政学と金融論(金融政策)が縦割りになっており、政府紙幣はそれらの狭間に入るのでキワモノ扱いである。このため、日銀の量的緩和でも理解不足の人が多いのは残念である。
まず政府紙幣はそれほど突飛なものではなく、ほぼ現行制度の中の話である。
かつて政府紙幣を生理的に嫌った与謝野馨氏は、経済財政相時代にとんでもない発言をした。
テレビ番組で与謝野氏は、政府紙幣について「『円』っていうのは使えないんですよ。だから、『両』とかにね、しないと。信用あります? 流通しないですよ」と言った。
これは政府紙幣が現行制度で構成できることを知らずに言ったことで、ある意味法律違反の発言だ。通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(以下「通貨法」)第二条第一項には「通貨の額面価格の単位は円とし、その額面価格は一円の整数倍とする」とある。政府紙幣は法定通貨であり、その通貨単位を「両」なんて勝手に言ってはいけない。それも現職経済担当閣僚がテレビで公言するのだから困ったものだった。