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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

「デキる社員に秘書をさせる」のが良い理由

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第55回】 2016年12月5日
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本の「代読」で経営者のシミュレーションをせよ

本の本質を理解し、それを経営者に伝える過程で経営者の視点を学ぶ機会になります

 経営者の秘書(経営補佐の秘書)を続けていると、いろいろなことを頼まれる。私の場合は、時間のない経営者の代わりに本を「代読」し、内容を要約して伝えるとともに、その内容から経営者の思考を発展させるための話し相手をする、ということを要望されていた。それなりに著名な経営者として、話題の本を全く知らないというのはよろしくない。しかし、すべて自分で読むほどの時間はない。そんなときこそ「秘書の出番」というわけだ。

 この「代読」ですべきなのは、(1)著者が伝えたいことを著者の論旨から外れないよう要約する、(2)経営者が質問するであろうことを予測して、あらかじめ回答を用意しておく、(3)自分がその本から得たもの、本を読んで考えたことをまとめる、という3つのことである。

 優秀な経営者は、この3つのことすべてに対して高いレベルの回答を用意しておかないと満足してくれない。たとえば(1)について、著者の世界観や論旨をしっかり把握していないと、途中で「それは違うんじゃないか」と横やりが入る。私は自分の代読の不備を指摘されるたび、『竜馬がいく』(*)のあるエピソードを思い出していた。

竜馬は、ひょんなことから蘭語を教えて生活している蘭学者・ねずみの講義に参加することになる。他の塾生たちと比べて、講義を聞く態度は不真面目そのもの。いつも末席でふすまにもたれ、鳥のさえずりを聞くかのように蘭語の法律概論の翻訳に耳を傾けていた。つまり、熱心な生徒ではなかったのだ。

あるとき、ねずみがオランダ政体論についての一文を訳したところ、それまで聞くともなしに聞いていた竜馬が言う。「いまの訳、間違うちょります。どこが間違うちょるかわからんが、間違うちょります」と。はじめは「師を愚弄するのか」と怒っていたねずみも、原文を確認すると、自分の誤訳に気づき、竜馬に謝罪する……ねずみが翻訳する蘭語の法律概論を聞いていくうちに、竜馬は自然にオランダの議会制度の本質を理解していて、文法的にどうというわけではなく、その間違いに気づいたのだ。

*司馬遼太郎(1998)『竜馬がゆく<2>』文藝春秋より引用

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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