米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、日本の長期国債の格付けを引き下げた。
他方、菅直人内閣は、6月をめどに財政再建についての方向付けを示すとしている。その検討に当たっては、定量的な検討が是非とも必要である。以下では、これまで検討してきた社会保障給付の状況等も踏まえ、国の一般会計についての収支シミュレーションを行なうこととしよう。
前提と計算方法
このシミュレーションにおける計算方法は、つぎのとおりである。
(1)消費税の増収額とその使途
現在、消費者が支払う消費税の税率は5%である。ただし、このうちの20%(消費税率に換算すれば1%)は、地方消費税の税率だ。以下では、消費税と地方消費税を合わせた税率を「消費税率」と呼ぶことにする。そして、そのうち80%にあたる国税分を検討の対象とする。
消費税率1%あたりの税収は、ほぼ2.5兆円である。このうち、国税分は2兆円だ。したがって、たとえば消費税率を5%引き上げれば、国税分は10兆円増える(注1)。
ところで、国税としての消費税の29.5%は、地方交付税交付金に充当されることになっている。以下では、この制度が今後も続くとして、各年度の地方交付税を次式で算出する。
(消費税の増税年度において)
地方交付税交付金=前年度交付金×(1+税収伸び率)+消費税増税額×0.295
(それ以外の年度について)
地方交付税交付金=前年度交付金×(1+税収伸び率)
なお、2012年度以外の年度については、
GDP伸び率=税収伸び率=税収、
その他歳出伸び率=社会保障費、国債費以外の歳出伸び率
としている。ここで示すシミュレーションでは、この伸び率を年率1%とした。
(注1)正確には、「消費税率を5%ポイント引き上げる」というべきであるが、ここでは簡単化するため、「消費税率を5%引き上げる」ということにする。