リベラルアーツ教育を土台に、多彩なキャリア支援に取り組む立教大学。卒業後の働き方の一つとしてスタートアップがある。今回は、在学中に起業し、スキマバイトアプリで注目され、今年7月に上場を果たしたタイミーの小川嶺代表に聞いた。

多彩なキャリア支援を通して、社会に貢献する人材を育てていきたいタイミー
小川 嶺(りょう)代表取締役 (写真左)
1997年東京都生まれ。立教新座中学校・高等学校を経て立教大学経営学部卒。在学中の2017年に「Recolle」を設立。18年に「タイミー」に社名変更。24年7月に上場を果たす。
立教大学
首藤若菜 経済学部教授 (写真右)
キャリアセンター部長
専門は労働経済学。博士(学術)。2011年立教大学経済学部経済政策学科准教授に着任。18年より現職。近著に『雇用か賃金か 日本の選択』(筑摩書房)がある。

 立教大学では、自らのキャリアをデザインする力を養うことを目的に、キャリア支援を行っている。学生は、多様な働き方に接するプログラムを通して、自分らしい人生を追求する力を身に付けていく。その多様な働き方の一つに起業がある。

 小川嶺代表は大学在学中の2017年に会社を設立し、スキマバイトアプリ「タイミー」を開発。人手不足に悩む労働環境の中で、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするサービスとして注目を集め、現在は日本全国で900万人※1を超えるワーカーが登録、今年7月には東京証券取引所グロース市場に新規上場も果たした。

 起業のきっかけは、小川代表自らがアルバイトとして働く中で、履歴書の作成や面接などの手間をなくし、アプリで簡潔にできれば便利になると考えたから。原点は、自分が欲しいサービスということだった。

 小川代表は立教新座中学校・高等学校を経て立教大学経営学部に進学。中高時代はサッカー部で、高校のときは生徒会長も務めた。

 起業家になることを決意したのは高校生のときだ。
「小川家は代々、小川乳業という企業を経営していたのですが、祖父の代で会社をたたむことになりました。18歳のときにその祖父が亡くなり、起業家の血筋を自分が受け継ごうと決意したのです」(小川代表)

 特別聴講生制度※2を利用して、大学のグローバル・リーダーシップ・プログラム(立教GLP)を受講。「企業から出された課題の解決策をチームで提案する授業が楽しかった」ことも経営学部に関心を持った理由の一つだ。

「立教大生が卒業後の選択肢として起業家を選ぶケースはまだ少ないが、小川さんのように不便を解消したい、人の役に立ちたいと考えている学生は少なくないと感じている」とキャリアセンター部長の首藤若菜経済学部教授は話す。「小川さんは、人手不足の解消や働く環境の改善など、社会課題に向き合っています。働き手が評価されるシステムの構築など、労働者に寄り添った発想も持っている。こうした試みは、スタートアップ企業のロールモデルになるのではないでしょうか」。

※1 2024年9月時点。 ※2 高校3年生が立教大学の正課科目を受講することができる、立教学院一貫連携教育プログラム。