国内電通グループ約150社で構成されるdentsu JapanがAI活用に向けて大きく動きだしている。同社のAI活用は大きく三つのレイヤーで構成される。「クライアントサービス」「AIアセット」、そして組織としての運営体制である「コーポレート機能」だ。そこで鍵を握るのは社内におけるAI人財の育成である。同社はどのような人財を育て、クライアントの成長や社会の進化にどう貢献しようとしているのか。同グループのAI活用をリードするキーパーソンに話を聞いた。
グループビジネス開発オフィス ディレクター 主席AIマスター
児玉拓也氏
三つのレイヤーでAI活用を広げる
dentsu Japanは2024年8月、AIに関する新ビジョン「AI For Growth」を発表した。「“人間の知”と“AIの知”の掛け合わせによって、クライアント様や社会の成長に貢献していく」という独自のAI戦略を基盤に、AI関連の研究・開発・人財育成などを推進していくという。
グループ全体のAI活用をリードする電通グループ グループビジネス開発オフィス ディレクター 主席AIマスターの児玉拓也氏は「AIは人と共に成長していく存在であり、人もAIから学んで成長し、新たに得たインサイトによってAIを進化させていくことを目指しています」と語る。同社にとってAIは対立するものでも、便利に使う道具でもなく、新たな価値を共創するパートナーであり、切磋琢磨する仲間と位置付けている。
こうした発想の背景にはdentsu JapanのビジネスとAIとの距離の近さがある。同社では以前からテレビ視聴率予測やバナー広告生成などリアルビジネスにAIを活用してきた。クライアントの業績向上に貢献するためには、膨大なデータを駆使した提案力は必要不可欠だ。それを強化するためにAIという存在は大きな意味を持つ。
「AI For Growth」は八つの領域を持ち、三つのレイヤーから構成される(図表1)。「クライアントサービス」のレイヤーには、マーケティング支援、トランスフォーメーション支援、プロダクト開発の領域、「AIアセット」のレイヤーにはデータインフラ拡充、AI人財育成、技術研究・開発、「コーポレート機能」のレイヤーにはAIガバナンス整備、組織構築・経営がある。
クライアントサービス、AIアセット、コーポレート機能の三つのレイヤーでAIリテラシーを高め、人間の知とAIの知の掛け合わせによって、クライアントの成長や社会の進化に寄与していくことを目指す
拡大画像表示
「三つのレイヤーをバランス良く進化させていくことが重要です。そのためにタスクフォースを含めてグループ内の施策を整備しました。その実行を下支えするコアとなるのがAIアセットであり、データと人財と技術の三つの領域で強化に取り組んでいます」と児玉氏は語る。