例えば、「ミシン」が生まれたことで「手で編む」ということが少なくなり、その分、より美しい服をつくることに専念し、より多くの服を作ることが可能になった。バックオフィスにおけるfreeeが、そのミシンのようになれればいいと思う。ビジネス上の「それはAIで分析できるよ」というレベルが上がっていくことで、人はより高度な分析や仕事をしていくことになる。短期的には、より忙しくなる人も増えるかもしれない。とにかく単純な業務をできるだけテクノロジー化して、創造的な本業により時間を使えるようになるほうがいい。

 5年後は、大抵のビジネスであれば、難しいことを考えなくても、本業だけやっていればビジネスがまわっていく社会になっていると思います。AIにより、ある程度の市場予測とかビジネス提案もパッと出てくる。人を増やしたいときも、手続きも何も考えずに、一緒にやろうよっていったら、給料の支払いも契約も簡単にできてしまう。5年後には、そんな社会になっているはずです。

 もっともっとバックオフィスの仕事は便利にすることができる。数百万社と言われている国内すべての企業にfreeeが導入され、つながり、効率化する。freeeは、日本中の企業活動に必要なインフラになっていきます。

イノベーションは
「斜め横」から生まれる

Photo by K.Y.

 創業前、freeeの企画段階の頃は多くの人から止められました。既存の会計に慣れている人たちはソフトに不便を感じていないし、もうそれに慣れているから変えたくない。新しいものは面倒だし、クラウドは不安です。freeeの構想を説明しても「これ欲しい」と、ピンと来てくれる人はとても少なく「今のままでいいじゃないか」そう言う人が多かった。

 会計の世界は、30年ほどの間、あまり変わってこなかった業界。代表的な会計ソフトが生まれたのが1983年であり、それ以降は実質的に多少のOSが変わっただけで、ハードウェアを伴うような大きな変化がありません。例えば、ゲームの世界で考えれば、30年でハード自体も大きく変化した。電話もそうです。会計ソフトの変化が少ないことはとても不健全なことです。

 もともと僕自身は、会計の専門ではありません。だからこそ「斜め横」から見ることで、新しい解決策に気がつくことができた。イノベーションは、多くの場合「斜め横」から生まれるものです。中にいると不便さにも気がつかないし、新しい解決策を思いつかない。当事者じゃないから客観的に見ることができて、「無駄」や「不合理」に気がついたりすることができる。だから「斜め横」という視点はビジネスにおいてとても大事なことです。

 また、「会社」ではなく「ムーブメント」をつくるという気持ちを持っています。それは「自分たちが社会を動かしているんだ」という実感であり、姿勢です。