同じ失敗をしないために、勇気を持って自分の失敗と向き合う

──新しいことを始めるには、失敗がつきものだと思いますが、失敗とどう向き合うか。失敗しても、リスクを取って新しいことにチャレンジするのか、それとも守りに入るのか。失敗との向き合い方について教えてください。

 人が失敗したときは、2通りに分かれます。失敗の原因を自分自身に求めるのか、誰かのせいだと思うのか。失敗というのはたいてい複合的で、自分にも原因があれば外部にも原因があるものですが、自分自身に着目して失敗の原因を探る人と、外部要因に着目して失敗の原因を探る人では、その後の展開が違ってきます。

 自分に原因を求めれば、自分自身を変えていくことができますが、外部に原因を求める人は心を閉ざして何も信用できなくなる。そういう人もたくさん見てきました。

 当時はできていませんでしたが、今、僕自身が失敗したときに大切にしているのは、心は波立つかもしれないけれどもイラッとする気持ちを抑えて、できるだけ素直に人の意見を聞くことです。すべてがいい意見とは限りませんが、虚心坦懐に耳を傾けると、自分にとってプラスになる発見があります。だから、傾聴することを心がけています。

「僕には4回、死ぬチャンスがあったんだ」自分が失敗した事実は、見たくないし、認めたくない。どんなに目を背けたくなっても、自分の傷口をしっかり見る。そして、その原因を掘り下げる。自分にとって都合がいいほうに考えたくなりますが、そうした誘惑を排除する。すごく勇気がいることです

 もう一つは、勇気を持って失敗と向き合うことです。自分が失敗した事実は、見たくないし、認めたくない。どんなに目を背けたくなっても、自分の傷口をしっかり見る。そして、その原因を掘り下げる。自分にとって都合がいいほうに考えたくなりますが、そうした誘惑を排除する。すごく勇気がいることです。

──そこの掘り下げが足りないと、同じような失敗をしてしまう。リスクを取って失敗することはいいことだということが、日本でも少しずつ認められてきましたが、「同じ失敗はしない」ということが大前提です。

 そのために、失敗と向き合って、根本の原因を知っておく必要があります。それが失敗からの学びです。

 自分の行動を振り返り、「こうすればよかった」「次はこうしよう」と反省することは大切ですが、ずっとそれを引きずって、ただ後悔するだけだとかえって逆効果です。反省するのは「次は同じ失敗をしない」ためです。過去のことに過度にとらわれてしまうと、次の一歩を踏み出すことはできません。

 失敗から立ち直り、リブートをして「今」に集中しなければいけないときに、過去を振り返って後悔することは、誰のためにもなりません。自分のためにも相手のためにもならないから、いったん走り始めたら「今」に気持ちを集中することが重要です。

 もちろん、迷惑をかけた人に「ごめんなさい」と謝るのは大前提です。あるいは、自分が間違えたと思ったら、「ごめんなさい、間違いでした。私はこうすべきだと思います」ということを相手にきちんと伝える。人から言われたから謝るのではなく、自分自身で考えて、自分自身の責任で方向転換をするならするということだと思います。