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再起動 リブート
【第1回】 2016年12月15日
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斉藤 徹

「僕には4回、死ぬチャンスがあったんだ」

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波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語「再起動 リブート」。著者の斉藤徹氏に本書についてインタビューした。バブルに踊らされ、金融危機に翻弄され、資金繰り地獄を生き抜き、会社分割、事業譲渡、企業買収、追放、度重なる裁判、差し押さえ、自宅競売の危機を乗り越え、たどりついた境地とは何だったのか。
(構成:田中幸宏 撮影・石郷友仁)

借金返済のために新たな借金を重ね、精神的に追い詰められる

──「僕は4回死に、そのたびに復活した」というキャッチコピーが印象的な『再起動 リブート』ですが、起業してはじめて迎えた「死」と「復活(再起動)」について教えてください。

斉藤 徹(さいとう・とおる)
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表 1961年、川崎生まれ。駒場東邦中学校・高等学校、慶應義塾大学理工学部を経て、1985年、日本IBM株式会社入社。29歳で日本IBMを退職。1991年2月、株式会社フレックスファームを創業し、ベンチャーの世界に飛び込む。ダイヤルQ2ブームに乗り、瞬く間に月商1億円を突破したが、バブルとアダルト系事業に支えられた一時的な成功にすぎなかった。絶え間なく押し寄せる難局、地をはうような起業のリアリティをくぐり抜けた先には、ドットコムバブルの大波があった。国内外の投資家からテクノロジーベンチャーとして注目を集めたフレックスファームは、未上場ながらも時価総額100億円のベンチャーに。だが、バブル崩壊を機に銀行の貸しはがしに遭い、またも奈落の底へ突き落とされる。40歳にして創業した会社を追われ、3億円の借金を背負う。銀行に訴えられ、自宅まで競売にかけられるが、諦めずに粘り強く闘い続けて、再び復活を遂げる。2005年7月、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業し、ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開。ソーシャルシフトの提唱者として「透明な時代におけるビジネス改革」を企業に提言している。著書は『BE ソーシャル 社員と顧客に愛される 5つのシフト』『ソーシャルシフト─ これからの企業にとって一番大切なこと』(ともに日本経済新聞出版社)、『新ソーシャルメディア完全読本』(アスキー新書)、『ソーシャルシフト新しい顧客戦略の教科書』(共著、KADOKAWA)など多数

 天下のエクセレントカンパニー、日本IBMを辞めて、最初の会社フレックスファームを起業したのは29歳のときでした。この世界で一旗揚げてやるぞと野心を持って、上、上を目指していたわけです。そこには若さゆえの焦りや、自信過剰があって……。ただ、当時は間違ったとは思っていませんでした。若かったので、単純に数字で一喜一憂していたわけです。創業した最初の月の売上が100万円くらいでした。それが2月のことで、その年の12月には月の売上が1億円に。単純計算で100倍です。毎年これを続けていたら、いったいどうなってしまうのか。バカみたいにそんなことばかり考えていました。

 最年少上場とか、ビル・ゲイツを目指そうとか、夢は大きく膨らみます。他の人から見たら夢物語でも、僕はすっかりその気になって、最短距離でそこに行こうと決めていました。その結果、無理を重ねることになったのです。

 一方で、現場はそんなにすぐには変われません。社長の理想と現実のギャップがどんどん開いていきました。そのギャップを直視できずに、本来は借りてはいけないようなお金を借り、外部の人に依存してしまった。そのとき僕は31歳。僕が一番年上でしたから、まわりはほとんど20代です。若いベンチャーがはじめての苦難(資金ショートとコワモテのクライアントからのクレームの嵐)に陥り、自分たちの手に余るからと、巨漢のコンサルタントを招き入れてしまったのです。

──本書の中でもとくに印象に残る岩郷さんですね。そして岩郷さんに付け込まれ、骨までしゃぶられた。

 物事には2つの面があります。1つは、岩郷さんには窮地を救っていただきました。僕たちだけではどうしようもなかった倒産の危機を、岩郷さんの豪腕で乗り切った。それは間違いありません。しかし、別の面から見ると、長期的にはマイナス面がどんどん膨らんでいきます。売上はたしかに増えましたが、岩郷さんが支援で入ってきたときよりも、最終的な負債ははるかに膨らんだ。状況はずっと悪くなったわけです。

 そのとき、僕の仕事は資金繰り一本にしぼられました。借金返済のために新たな借金を重ね、ウソで塗り固めたような日々を送るうちに、心がすさみ、自殺がリアルな選択肢のひとつになりました。精神的に一番追い詰められたのがこのときです。

──そこで1回目の再起動(リブート)に踏み切りました。

 とにかく岩郷さんと手を切らなければいけない。そのために、利益の出ているアダルト系事業を分社化したうえで、タダで岩郷さんに譲渡し、自分は借金丸抱えでビジネス系事業で生きていこうと決めました。ただ、ビジネス系で成功する保証はどこにもなかった。僕たちはアダルト系のダイヤルQ2から早く逃れたかったので、それまでも何度もビジネス系にチャレンジして跳ね返されてきました。たとえば、テキストのかわりに録音した音声をやりとりする「ボイスメール」も手がけましたが、なかなかうまくいかない。そこまでニーズがなかったという問題もありますが、僕たちが背水の陣をとっていなかったことも原因です。

──つまり、アダルト系事業という儲け口が別にあって甘えが出た、と。

ちょっとやってうまくいかなかったらすぐに撤退してしまう。撤退できる先があったために、かえって攻めきれなかったということです。だから、1回目のリブートでは背水の陣を敷きました。失敗したら後がないところまで自分たちを追い込んだ。もう1つは、タイミングです。リブートした直後、インターネットの風が吹きます。この2つが追い風となって、最初のリブートは成功します。

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