我が国テロ史上
最も恐ろしい暗殺劇

 ここに、我が国テロ史上でも、もっとも恐ろしい暗殺が発生することになる。

 このことは、本書のテーマから余りにも乖離するので今は触れないが、薩摩の島津久光が「尊皇佐幕派」であることに驚く読者がおられるかも知れない。
 しかし、このことは、土佐藩山内容堂以上に明白な史実である。
 島津久光や山内容堂が「尊皇佐幕派」であって「討幕派」ではなかった点にも、幕末の実相を理解する大きなポイントがあるのだ。

 歴史に「もし」(ヒストリカル・イフ)は禁物、とよくいわれるが、敢えて「もし」と考えてみる。

 もし、薩摩長州のテロを手段とした討幕が成功せず、我が国が「明治維新という過ち」を犯さなかったら、我が国はその後どういう時代を展開し、どういう国になっていただろうか。

 この解は、薩摩長州勢力が全否定した江戸という時代が、どのような政治経済システムを有し、どういう社会システムを創り上げ、どういう性格の文化を成熟させたかを理解しない限り解けないのである。