「豪華客船楽しむ時代に」
約6年半前の2010年3月6日、私は日本の全国紙にこのようなタイトルで、中国人観光客がクルージング用の大型豪華客船に乗って世界中を旅行する時代が訪れた、とコラムで取り上げた。
その年の2月、豪華客船による初の世界周遊ツアーが実現したので、当時の中国のメディアは、中国もクルージング元年を迎えた、とはしゃいだ。
イタリアの「歌詩達」(コスタ)、米国の「皇家加勒比」(ロイヤルカリビアン)などの社名が豪華客船と重なり、多くの中国人の心に焼き付けられた。地中海の青い空、太平洋を横断する爽快さ、船の横を流れていく無名の島、海の水面をかすめて飛ぶ魚……。これらが豊かになった億単位の中国人が追い求める新しい生活スタイルとなりつつある、と私は書いた。
実は、その時点から中国の沿岸部で新しい競争も始まった。「郵輪母港」つまりクルーズ専用の港になるべく、大連、青島、上海、寧波、アモイ、海南の三亜などの沿海都市が名乗りをあげている。タイタニックよりはるかに大きい皇家加勒比の22万トン客船が、2009年12月に初航海をした。それを聞いた海南では、すぐに25万トンの大型客船が停泊できる規模の埠頭の建設に取り掛かった。いうまでもなく、その大型客船の寄港に狙いを定めている。
歳月はあっという間に過ぎ去ってしまい、中国のメディアはまた、2015年はクルーズ元年と騒ぎ出した。同じく「元年」という言葉を使っているが、その着眼点が違う。前者はクルーズが中国に登場したことに力点を入れて強調しているのに対して、後者はその市場規模がある程度になったことに力点を置いて見ているのだ。
その着眼点の違いからは、市場の変化と乗客の顔ぶれが読み取れてくるので、なかなか面白い。