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47原則
【第13回】 2016年12月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
服部周作

マッキンゼー世界7ヵ国の仕事で学んだ
どんなプレゼンにも応用できる必須の6要素

マッキンゼー世界7ヵ国の現場で学んだ仕事の基本をまとめた書籍『47原則』の発売から約半年。読者の方から「この内容をチーム全体で共有して、チーム力を上げたい」という要望を多くいただきました。チーム力アップに『47原則』を活かすには、たとえば第2章「コミュニケーション上手になる」や、第3章「生産性を極限まで高める」などをメンバー全員で共有し、切磋琢磨することが有効です。今回はそのうち第3章から、誰もがプレゼン上手になれる6つの要素を紹介します。

 私がマッキンゼーで学んだ、プレゼンテーションの中核となる6つの要素があります。

絶対に失敗しないプレゼン必須の6要素とは?

 プレゼンの目的は、メッセージを伝えること、議論を発展させること、仮定を検証することなど多岐にわたりますが、この6点を押さえたスライドを作成すれば、どんなプレゼンでも骨格となるので便利です。

1 背景・問題・目的は何か
2 当社はどんな変化を実現するか
3 インパクトを数値で表すと?
4 答えてもらうべき重要な質問は何か
5 詳細な作業計画の中で、重要なワークショップと会議は何か
6 提案するプロジェクトチームはどんな構成か

 それぞれ少し説明を加えましょう。

■1 背景・問題・目的

 プレゼンの冒頭で状況説明を忘れてしまっていることはありませんか?これは、本人が状況を意識しなくなっていることが原因です。長期間にわたり「ある状況に」身を置いていたせいで、自分が取り組んでいる仕事について、相手が何も知らないことを忘れてしまうのです。

 どんなプレゼンでも「背景・問題・目的」のテンプレートを作り、状況を説明します。直近の現状であれ、複雑な事態であれ、簡単な経緯であれ、肝心な「今の状況」をプレゼンの冒頭で説明することが大切です。

 その際、左側に「自分が理解している状況」を、右側に「プロジェクトで意図する目的」を配置してください。過去を左に、未来を右に表すと、時間の流れが左から右へ流れるように感じられ、理解しやすくなります。

 箇条書きでメッセージを伝えるには練習が必要ですが、メッセージを簡潔にすると大きなメリットがあります。メッセージの数が3~4個を超えると、聞き手が興味を失ってしまうからです。聞き手の立場で考えましょう。大抵の場合、「大きな問題は何か、それにどのように取り組むつもりかだけ教えてくれ(あとはさっさとやれ)」というのが聞き手の心情です。次の段階で、問題や状況を詳細に検討するのがあなたの仕事です。

■2 当社が実現する変化

 このスライドは、改革のプロジェクトで特に効果的です。マッキンゼーではこのスライドを「フロム・トゥー・モデル」と呼んでいました。テンプレートには「from」と「to」の欄があり、それぞれ、「現状」と「望ましい未来」の状態を表します。こうすると、最終的な状態と、何をゴールとして目指すかについて、手っ取り早く示すことができます。幹部層レベルでは、迅速さと敏捷性が肝心だからです。

 また、インタビューや実地調査、分析などを行った場合に、あなたが学んだことを5~6個の箇条書きにまとめるのにもぴったりの方法です。理想の状態や、理想の目的地を描くことは、誰もが当然やるべきことです。聞き手はこうした、全体像がつかみやすいアプローチを好みます。

 ただし、ひと目で分かる簡潔なものを作るのは、意外と難しいものです。ウッドロウ・ウィルソン大統領の有名な言葉に「10分の演説には1週間の準備が必要だ。15分の演説なら準備に3日、30分なら準備に2日かかる。1時間の演説なら今すぐできる」とあります。わかりやすく、示唆に富むメッセージを作り上げるのは至難の技なのです。

■3 数値化されたインパクト

 コンサルタントは、数字を使って話します。生産性向上の場合は百分率(%)を使います。在庫を削減し、店舗売り上げを増大させる場合なら、回転率について話します。言葉は真実を偽る恐れがありますが、数字は真実を語るからです。

 例えば戦略について言うと、数値がないと、どこで勝負するべきか、どこでどうやって勝てばよいかを客観的に評価するのが困難です。数字はあらゆるプレゼンの柱であり、早い時期から、アウトプットのイメージとともに提示すべきものです。

 「数値化されたインパクト」のテンプレートを使うということはすなわち、あなたは聞き手に「これらの数字が現実になります」と告げることになります。インパクトを算出した仮のスライドも2~3枚、無理にでも作っておきましょう。すると、完成すべき分析を前倒しすることになります。このアウトプットの状態が、他のシニア・リーダーたちの意向に即しているのか早めに確認しておけば、見当違いな目標に進まずに済みます。

■4 答えてもらうべき重要な質問

 ここで使う5~6個の質問は、プレゼン全体の骨組みになる要素です。これらの質問は、あなたが前に示した目的(最初の「背景・問題・目的」のスライドで示したもの)と明瞭に結びつくよう、一貫性を持たせてください。

 例えば、目的のひとつが「適切な経営モデルを見つけること」だとします。

 この場合、問題を提起するスライドでこの目的を取り上げ、「御社の将来の成長計画にふさわしい経営モデルには、どんな組み合わせが考えられるか」「競合他社から学ぶべきベンチマークにはどんなものがあるか」などを確認すべきです。

 ときどき、「わかりやすくまとまったプレゼンを作るにはどうしたらいいか?」と聞かれることがありますが、手短に言うと、主たる質問と副次的な質問の組み合わせがポイントとなります。質問の作成は、深く考えを巡らせなくてはならない難しい作業です。

 同じ質問をするにも、聞き方を微妙に変えることによって、聞き手に与える印象は大きく変わり、答え方も変化するはずです。

 一例として、次の3つの質問について考えてみましょう。

・御社の意思決定機関の統制力を強めたいですか、それとも弱めたいですか
・御社から子会社にもっと権限を委譲したいですか
・中央集権型モデルと分権型モデルのうち、どちらの経営モデルを確立したいですか

 言い方を変えて、同じ質問をしていることがおわかりでしょうか?

 最初の聞き方は、統制力に軸足が置かれています。意思決定機関と言われると、本音や実情は別として、弱いよりはむしろ強い統制力を望むものです。2番目の聞き方は、子会社への権限委譲を支持するようなニュアンスがあり、本社では抵抗を感じる人もいるでしょうから、回答に本社を重んじるバイアスがかかるかもしれません。3番目の聞き方は、公平でバランスが取れています。答えを誘導したくない場合は、こういう問い方をするべきです。

 つまり、重要な問題の提起は、プレゼンをより良い流れにしてくれる、便利なツールと言えます。どんな質問をする場合でも、自分が何に焦点を当てて明らかにしたいのかをよく考えましょう。

■5 作業の基本計画

 1900年代に機械工学者であり経営コンサルタントでもあったヘンリー・ローレンス・ガントによって考案された「ガントチャート」は、プロジェクトの工程を棒線で示した、工程管理に使われる表です。

 私もマッキンゼーに入社するまで、仕事で使ったことは皆無でした。仕事の計画を図で示すのは、時間の無駄だと考えていたのです。

 でも、その考えは間違っていました。エクセルの単純な表形式では、見えない物事があるからです。それに気づいたのは、製品開発プロジェクトに携わったときでした。

 製品の開発や発売のプロジェクトでは、主な関心事が2つあります。さまざまな機能の歯車を見事にかみ合わせることと、色鮮やかな基本計画を立てることです。「作業の基本計画」のテンプレートはガントチャートに似ていますが、もっと詳しい表です。また、プロジェクトの完了までのクリティカルパスが示されます。「クリティカルパス」とは、全行程においてスケジュールを左右するネックとなる作業行程を指しますが、見方を変えると、この部分の改革こそ最終目的地に到達するために必要かつ最も効率的な手段と言えます。

 何を作る場合でも、前提条件となる作業を完了して初めて、次の段階に移ることができるので、クリティカルパスが必然的に生じます。言い換えると、クリティカルパスは作業に焦点を当てるのです。マッキンゼーで私が学んだように、重要なミーティングやワークショップ、節目となる出来事などを図に示して、作業計画を視覚化すると、チームの全員が同じ視点でプロセスを捉えられます。このビジョンを簡単に、わかりやすく共有できるという点で、作業の基本計画やガントチャートは何物にも代えがたい効果をもたらします。

 ガントチャートは一般的に、「活動の説明」「時間(横軸)」「担当の人やチーム」の3領域に分けられます。時間軸に合わせて、重要なミーティング、ワークショップなどの節目となる出来事を横棒で表します。製品開発のクリティカルパスと同じ要領で、ほかの作業を始める前に完了させておくべき作業や活動の前提条件など、依存関係も忘れずに示しましょう。

■6 チーム構成

 プロジェクトには関係者がいます。「チーム構成」のテンプレートを使い、前もって責任と役割を整理しておくと、各人の期待に整合性を持たせることができます。

 チーム構成のテンプレートには、(1)社内・社外双方の参加者を含む、きちんと定められた組織図、(2)役割とその任務として期待されること、(3)プロジェクト運営の方針や主要業績指標、を含めるとよいでしょう。組織図が完成したら、チームの一人ひとりを配置して、不要な人を除外し、必要があれば追加しましょう。

 以上のテンプレートをベースにして、プレゼン資料を作りましょう。さらに、プレゼン用の極力シンプルなツールキットとして、「背景・問題・目的」「実現する変化」「数値化されたインパクト」「重要な質問」「作業の基本計画」「チーム構成」のテンプレートをあなた独自のバージョンで作成しておくと、どんなプレゼンにも応用できます。ぜひ試してみてください。

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服部周作(Shu Hattori)

経営コンサルタント。カナダ・マギル大学商学部卒業、政府奨学生として国立台湾大学卒業(経営学修士)。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて、アジア、北米、ヨーロッパなど7か国における先端技術産業、ハイテク産業、メディア産業分野のプロジェクトに従事し、2015年独立。日中を市場とする求人ポータルサイト運営など、ベンチャー設立経験も複数有する。日本語と英語を母国語とし、中国語も堪能。初の著書として、米国にて2015年11月に『THE McKINSEY EDGE』(McGraw-Hill Education社)を刊行し、本書は本人による邦訳版である。
 


47原則

マニュアルにない小さな工夫が、成果や評価に大きな差を生む!著者が世界一のコンサルティングファームで学んだ究極の仕事術を紹介していきます。著者が世界7か国のビジネスに携わるなかで随時メモしてきた手法の数々を踏まえ、尊敬する社内外のリーダーたち約20人にヒアリングして厳選した成功原則は、話を聞いたリーダーたち自身も「20代のときから知っておきたかった!」と実感するポイントばかり。“仕事ができる”リーダーたちが日ごろさりげなくやっている日々の習慣やマインドセットなど世界最強の「仕事の基本」、今日から実践できます!

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