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山田厚史の「世界かわら版」

成果なき北方領土交渉と真珠湾訪問に見る安倍外交の迷走

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第126回】 2017年1月5日
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 トランプ大統領が登場するアメリカ、極右政党が台頭する欧州。先進国と呼ばれた国々が波乱含みとなる今年、日本外交の針路はどうなるのか。年末に行われたロシアとの北方領土交渉と首相の真珠湾訪問に、安倍外交の危うい現実が見えている。

 真珠湾で慰霊に臨んだ稲田朋美防衛相は、帰国すると真っ先に靖国神社を訪れた。防衛相としての参拝が中国・韓国を刺激することは承知の上での強行である。安倍首相は真珠湾で「米国との和解」を強調したがアジアへの贖罪には触れなかった。太平洋の向こうに気遣いながら、アジアの近隣に尻を向ける日本の姿勢を内外に示した。

安倍外交迷走の象徴
期待外れの日ロ首脳会談

 直前に行われ北方領土交渉に安倍外交の迷走ぶりと限界が露呈している。

 首相は選挙区である山口県長門市にプーチン大統領を迎えた。外交成果が期待できると判断したからだろう。政治ショーを彩るイベントの準備は手抜かりなかったが、肝心の交渉の中味は惨憺たるものだった。

 プーチンは2時間40分遅れで会場にやって来た。首脳会談に遅刻する非礼は、よほどの事情がない限り「不快の表明」である。こんな会談は意味がない、というロシア側の意思表示である。

 なぜか。すでにひと月も前から、領土交渉は頓挫することが見えていた。

 11月9日、モスクワを訪れた谷内正太郎国家安全保障局長はロシアのパトルシェフ安全保障会議書記と予備交渉に臨んだ。ロシア側は歯舞・色丹の2島を返還することを想定し、「米軍の基地が置かれることはあり得るのか」とパトルシェフ書記が念を押した。

 谷内局長は「可能性はある」と答え、ロシア側を仰天させた。

 返還後の領土に米軍基地が建設されるなら領土交渉には応じられない、というのがロシア側の一貫した態度だった。分かっていながら「基地建設の可能性」を予備会談で表明するのは交渉を止めるに等しい。

 プーチンは2000年6月に森首相(当時)との間で「返還後の米軍基地」について確認している。森氏は「あり得ないこと」と答えた。これが両国間の共通認識とされてきた。

 体制転換を果たしたとはいえロシアと米国の軍事的緊張は続いている。返還後の北方領土に米軍基地などあり得ない、というのがロシアの立場だ。パトルシェフ書記の問いは、返還を前提にした最終確認だった。報告を聞いたプーチンは激怒した、という。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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