ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

トランプがトヨタに課す「仕向地法人税」は関税とどう違うか

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第128回】 2017年1月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 「NO WAY! Build plant in U.S. or pay big border tax.」

 新年早々トランプ次期大統領が、トヨタ自動車が新設する工場について、そうツイートすると、トヨタの株価は3%下がった。

 ツイートだけで企業の巨額の時価総額が変動するという方法は、あまりにも未熟で品がなく、これからの世界経済へのリスク、不確実性を高めるもので大統領就任後は自粛すべき方法だ。

 ところでこの「pay big border tax」発言を、日本経済新聞(1月6日夕刊一面)や朝日新聞などは「関税を払え」と訳していたが、それは「誤訳」だ。関税の英語は、custom duty、import duty、tariff で、“border tax” ではない。

 実はこの税制こそ、第126回の本欄で紹介した、「仕向地課税(最終消費地課税)法人税」である。

米国には消費税(VAT)のような
国境調整ができる税制がない

 改めて確認しておくと、わが国にも“border tax”は存在している。それは消費税(VAT)である。米国からわが国に国境を超えて輸入される米国車には、輸入業者が8%の消費税を払わなければならない。もちろんトヨタ車がわが国で販売される際にも8%の消費税が課せられるので、わが国内では米国車と国産車の間の税制上の不公平は存在しない。

 さらに、トヨタが米国に輸出する際には、わが国の消費税8%分が還付される。このように、輸入には輸入時点で課税され、輸出には輸出時に還付する仕組みを、国境調整(border adjustment)という。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧