トランプがトヨタに課す「仕向地法人税」は関税とどう違うか

「NO WAY! Build plant in U.S. or pay big border tax.」

 新年早々トランプ次期大統領が、トヨタ自動車が新設する工場について、そうツイートすると、トヨタの株価は3%下がった。

 ツイートだけで企業の巨額の時価総額が変動するという方法は、あまりにも未熟で品がなく、これからの世界経済へのリスク、不確実性を高めるもので大統領就任後は自粛すべき方法だ。

 ところでこの「pay big border tax」発言を、日本経済新聞(1月6日夕刊一面)や朝日新聞などは「関税を払え」と訳していたが、それは「誤訳」だ。関税の英語は、custom duty、import duty、tariff で、“border tax” ではない。

 実はこの税制こそ、第126回の本欄で紹介した、「仕向地課税(最終消費地課税)法人税」である。

米国には消費税(VAT)のような
国境調整ができる税制がない

 改めて確認しておくと、わが国にも“border tax”は存在している。それは消費税(VAT)である。米国からわが国に国境を超えて輸入される米国車には、輸入業者が8%の消費税を払わなければならない。もちろんトヨタ車がわが国で販売される際にも8%の消費税が課せられるので、わが国内では米国車と国産車の間の税制上の不公平は存在しない。

 さらに、トヨタが米国に輸出する際には、わが国の消費税8%分が還付される。このように、輸入には輸入時点で課税され、輸出には輸出時に還付する仕組みを、国境調整(border adjustment)という。