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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

慰安婦像を巡る韓国の市民活動は民主主義を逸脱している

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第16回】 2017年1月11日
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釜山の日本領事館前に設置された慰安婦少女像 Photo:YONHAP NEWS/AFLO

日本大使の一時帰国は
韓国にとって想定外?

 韓国・釜山市の市民団体が30日、同市東区の日本総領事館前に、元慰安婦を象徴する少女像を設置したのに対し、日本政府は、長嶺安政大使と森本康敬総領事の一時帰国という韓国政府が予想もしなかった強い措置で対抗した。

 私も2012年8月、在韓大使をしていた時に、李明博大統領が竹島に上陸したことに対する対抗措置として一時帰国を命じられたことがあった。しかし、この一時帰国は、韓国の国家元首である李明博大統領が日本の領土に上陸したことに起因するものである。

 私の一時帰国は、韓国側としても当然予期しうる措置であったであろう。韓国国内で大統領を擁護する多くの声に交じって、大統領の行動を批判する良識派の声も聞かれた。

 反面、今回の措置は市民活動家の行動に起因するものであり、韓国政府自体の行動ではなく、非難されるべきは政府の無作為であったということで、その重みは違うともいえる。しかし、外交交渉の合意事項を誠実に実行していなかったことに対する抗議の措置としては決しておかしなことではないであろう。

 この措置によって日韓関係は当面一層の停滞感が漂うであろう。しかし、朴槿恵大統領と崔順実容疑者の関係が取り沙汰されて以来、韓国の野党の勢いが増し、日韓の慰安婦合意の見直しを主張するなど、先行き不透明感が漂っていた。こうした中で、今回の日本の措置は、日本として韓国の慰安婦合意見直し論には応じないという強い姿勢を、大使の帰国という抗議の姿勢によって示したものであり、長い目で見た日韓関係を考える場合、日韓関係を正しい方向に導くものであると考える。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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