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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

大統領弾劾で韓国の政治経済、慰安婦、対北朝鮮問題はこうなる

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第15回】 2016年12月15日
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朴槿恵大統領の弾劾が訴追が可決された翌日も、ソウルでは朴大統領の即時退陣を求めるデモが繰り広げられた  Photo:AP/AFLO

 12月9日、韓国国会において、朴槿恵大統領の弾劾訴追案が採決され、賛成234、反対56、無効7、棄権2で可決した。これによって、朴大統領は職務を停止し、黄教安首相が大統領代行として執務することになった。朴大統領に対しては、今後憲法裁判所が弾劾の是非を審査し、180日以内にその是非を決定することになる。そして、弾劾が決定すれば、それから60日以内に大統領選挙が行われる。

 韓国国会の議席は300席であり、弾劾可決に必要な3分の2の賛成票200を大幅に上回ったことは、与党の非主流派のみならず、主流派の多くも賛成に回ったことを意味している。朴大統領はこれを受け、同日夜、大統領府で開いた閣僚懇談会で、「国会と国民の声を厳粛に受け止める」「憲法と法律が定めた手続きにより、憲法裁の弾劾審判と特別検察官の捜査に淡々と対応していく」と述べたが、辞任の意向は示さなかった。ソウルでは弾劾が採択された後の週末も、市民が朴大統領の即時退陣を求めるデモを繰り広げている。

憲法裁による弾劾の可否決定まで
韓国の政治経済は膠着状態に

 弾劾のもたらす韓国の政治経済への影響がどうなるか。まずは、憲法裁が弾劾の是非を決定するまでは、政治空白が韓国の国内政治を極めて不安定な状況に置くことになるであろう。韓国の国内政治は、憲法裁による弾劾決定、大統領の失職を想定した大統領選挙ムードに入り、安全保障、経済など韓国の安定にとって不可欠な事柄も宙に浮く状況が想定される。

 2004年、当時の盧武鉉大統領の弾劾が可決された時は、ソウル市長などを歴任し、政治経験が豊富な高建氏が首相であり、同氏を中心に大統領不在の穴を埋めた。しかし、今回大統領代行となる黄教安首相は、朴大統領が任命した首相であり、野党はもともと同首相の更迭を求めるなど折り合いが悪い。そもそも、朴大統領の下でも与野党の対立案件を国会で決めることはできず、それが経済の困難にも拍車をかけてきた経緯がある。黄首相は、もともと法曹界の出身で、国内政治の洗礼を浴びてきた人ではない。朴大統領を支える首相であり、朴大統領の権威が失墜した今、大統領に代わり、独自に権力を行使することは不可能であろう。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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