「女性医師(内科医)が担当した入院患者は男性医師が担当するよりも死亡率が低い」――。米国医師会の学会誌で発表された日本人研究者(米国在住)の論文が、現地のワシントンポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの有力一般紙がこぞって取り上げるほどの騒ぎとなった。『死にたくなければ女医を選べ!』という報道まであったという。果たして、女性医師に診てもらった方が安全なのだろうか。日本でも当てはまることなのだろうか。その論文を書いたハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏に取材してみた。(医学ライター 井手ゆきえ)
医師・歯科医師・薬剤師調査の概況(厚生労働省)によると、2014年12月31日現在の医師数は31万1205人で、このうち病院や診療所で働いている医師は29万6845人、男性医師が23万6350人、79.6%、女性医師が6万495人、20.4%だった。
診療科別では圧倒的に内科医が多く、全体の2割6万1317人を占めた。内科の男女比は男性81.1%、女性が18.9%で、ほぼ全体像をなぞっている。
さて、男女比に注目したのにはわけがある。
女性内科医が担当した入院患者は
男性が担当するより死亡率が低い
昨年12月、米国医師会の学会誌のJAMA Internal Medicineに「女性内科医が担当した入院患者は、死亡率や再入院率が低い」という調査結果が掲載された。
調査対象はメディケア(高齢者・障害者向けの公的保険)に加入している65歳以上の高齢者で、肺炎や心疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など日本でもおなじみの内科の病気で緊急入院した患者およそ130万人。
対象患者の入院後の経過と担当医の性別との関連を解析するため、メディケアに登録されたデータから病状や診療に関するデータを入手し、入院日から30日以内の死亡率(30日死亡率)と退院後の30日以内に再び入院する確率(30日再入院率)を女性医師と男性医師とで比較した。